ロックバンドThe Flaming Lipsの
パフォーマンスに見るコロナ禍に
おけるライブの楽しみ方


当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

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今日のトピック

米のロックバンド「The Flaming Lips」は、6月10日に放映された米CBCのテレビ番組「The Late Show with Stephen Colbert」内で大きな透明のボールに入って演奏を行い、同じく観客もひとりずつボールに入ってライブを楽しみました。

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今回のトピックは、大学時代から良く聴いていたバンド、The Flaming Lipsを取り上げました。当時驚いたのが彼らのCD4枚組みのアルバム「Zaireeka」。4枚を同時再生して初めて曲として完成するという前代未聞のシロモノでした。4枚を同時に再生できる機会はさすがにあまりありませんでしたが、その次のアルバム「The Soft Bulletin」は、メランコリーかつ多幸感溢れる素晴らしい作品でした。

そんなThe Flaming Lipsが、CBCの番組内で代表曲「Race For The Prize」を演奏した際に行ったのが、演奏者と観客が皆、ひとりずつ透明なボールの中に入るという、なんとも不思議なパフォーマンスでした。彼らのサイケデリックな音楽と、リズムに乗って飛び跳ね揺れるたくさんのボール、ボールの中で楽しむ観客の姿。パンデミックによる抑制と感染対策に追われる厳しい現実のなかで「このライブに参加してみたい」とポジティブに思わせる演出です。「Race For The Prize」が発表されたのは1999年。20年の時を経て現在も新鮮さを保つバンドならではの底力が伺えます。また、この時期、ソーシャル・ディスタンシングに配慮しつつ満喫できるライブを放送したのは、テレビ局の粋な計らいでした。

彼らは、もともと幻想的でエンターテイメント性の高いライブで知られています。舞台装置、照明はもちろんのこと、今回のようにボールを使った演出も彼らの定番です。観客の上をカラフルで大きいボールが飛び交うものや、メンバーがボールに入って観客の上を歩くというものもありました。5月28日に発表されたミュージックビデオ「Flowers of Neptune 6」でも使われています。これまで積み重ねてきた手法を、コロナ禍の状況に適応させてアップデートしたことが高いクオリティにつながっていると思います。

ボールの中で音はどのように聴こえるのか?入場できる観客数は少なくなってしまうのか?という疑問はありますが、このパフォーマンスをきっかけに、社会的距離が取りづらく3密環境になりがちなライブハウスや舞台の再開のヒントを見つけることができるかもしれません。End

The Flaming Lips
米のロックバンド。1983年からオクラホマ州にて活動を開始。

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。