NEWS | サイエンス
2020.06.16 15:40
数千年にもわたって進化を遂げた生物の「組織」は、さまざまな機能に対して完全な最適化がなされているそうだ。たとえば軟骨組織は、関節のクッションとして柔らかく、圧縮に反発したり体の重みを支えたりする強度があるなど、すぐれた対応力のある弾性組織なのである。
しかし、こうした組織の特性や動きと完全に一致するような人工の代替物を作り出すことは非常に難しかった。そこで、米コロラド大学デンバー校の研究チームは、「液晶エラストマー」と呼ばれる材料を使って、3Dプリンタで複雑な多孔質の格子構造を開発した。
液晶エラストマーは柔らかく多機能的な材料で、弾性に優れ、高エネルギーを分散させることができるという。チームのひとりはこれまでに、この材料でフットボール用ヘルメットの衝撃吸収材を開発したことがあるそうだ。
今回は、デジタルライトプロセッシング(DLP)方式の3Dプリンタを使い、蜂蜜のようにも見える液晶樹脂を作製。この樹脂に紫外線をあてて硬さをもたせることで、柔らかくて強く、順応性のあるエラストマーができあがった。
サンプルとして小さくて精巧な蓮の花を作ったほか、脊椎の癒合を促す「ケージ」と呼ばれる器具の非常に細やかで大きさもあるプロトタイプなども完成。市販の光硬化性エラストマー樹脂のものと比較して、12倍のひずみ速度依存性と最大27倍のひずみエネルギー散逸も実現したそうだ。