広告がこの世から消えたら?
真鍋大度が『減損現実」技術においてコンセプトMVを考案

オーストリア・リンツで開催される芸術・先端技術・文化の世界的イベント「アルス・エレクトロニカ(Ars Electronica)」は、今年メディアアートに革新をもたらした人物や作品・プロジェクトを表彰する「アルス・エレクトロニカ賞2020(Prix Ars Electronica 2020)」を発表した。

今回は、アーティスト・真鍋大度(Rhizomatiks)と映像ディレクター・清水憲一郎(Pele)がディレクションを手がけた、イギリスのアーティスト、スクエアプッシャー(Squarepusher)のミュージックビデオ「Terminal Slam」が、コンピューターアニメーション部門の「栄誉賞(Honorary Mention)」を受賞した。

「Terminal Slam」は2020年1月に公開された作品。MRグラスをかけて街中を歩くと広告や人物がAIによって削除され、風景が音に合わせて変化していく様子が描かれている。

真鍋はこの作品について、「スクエアプッシャーとの対話の中で広告のあり方や未来の広告について考える機会があったのだが、Diminished Reality(減損現実)技術を用いて街中の広告を削除出来たら面白いのではというアイディアを思いついて、それを今回のMVの発想の原点とした」と語る。

真鍋がアイディアからコンセプトを設計した後、機械学習技術やCGエフェクト技術の使用方法などを設計。その後、清水が撮影・編集などのディレクションを担当し、Rhizomatiksエンジニア・浅井裕太が街中のオブジェクトを機械学習技術によって認識する実装を行った。

このMVでは技術的に不可能だったため、広告の認識は手動で行っている。それでも真鍋は、「おそらく1~2年後には、AR/MRグラスをかけて街中を歩いたときに、出てくる広告を全部消せるようになる」と考えており、このMVでその世界観やイメージを創り上げている。

また、アルス・エレクトロニカは、「このミュージックビデオは、実写映像とコンピューターで作られた画像やアニメーションが、視覚的にも音楽的にも息をのむほど美しく組み合わされている。さらに、現代社会が日々直面している、プライバシーの喪失や、データマイニングや広範囲にわたるマーケティング、監視社会など、現代社会が日々直面している問題にも触れている」と評価している。End

▲スクエアプッシャー(Squarepusher)

▲真鍋大度(Rhizomatiks)

▲清水憲一郎(Pele)