建築家・前田圭介が率いるUIDが手がけた
十字柱に支えられる「こどもえんつくしダイニングホール棟 forestaカランころ」

▲南より見る。手前の軒下はそらまめテラス © 藤井浩司(TOREAL)

建築家・前田圭介が率いる建築設計事務所 UIDは、広島にある「こどもえんつくしダイニングホール棟 forestaカランころ」の設計を手がけた。

▲テラスより十字柱を見上げる © 藤井浩司(TOREAL)

1978年に開園し、幾度かの増改築を経て現在の園舎の姿があるという「こどもえんつくし」。前田は2012年に乳児棟「Peanuts」の設計を手がけており、このたび乳児棟の北面に立ち並んでいた古い空き家が解体されて増築が計画された。

▲乳児棟「Peanuts」の奥に新園舎を臨む © 藤井浩司(TOREAL)

敷地周辺は山裾に広がる住宅と、古くからの里道や水路、田畑など長閑な風景が広がり、隣接する既存園舎はメイン棟に始まり、ズック(下駄箱)棟、ホール棟、乳児棟が点在。「統一感のない統一感」とでもいうような新旧の混在する在り様が心地良いそうで、昨今の建替えによって刷新されていく園舎とは一線を画している。

▲テラスに水を張って水遊びをすることも可能 © 藤井浩司(TOREAL)

そこで、既存園舎の形状を踏襲するのではく、様々な年代に建てられた小さなまちのような園舎の物語性をさらに膨らませながら、緩やかな完結しないマスタープランを目指した。

▲ダイニングホール © 藤井浩司(TOREAL)

今回は、こどもの増員や設備機器の老朽化に伴い、既存園舎から給食室を移設するのにあわせて、「食の空間」を新設。一般的なランチルームがもつ食という日常の一場面だけではなく、地域住民や保護者を招いた食事会や誕生会などの交流が生まれる、「ルームではない広がりを創造させる新たなダイニングホール」を計画した。

▲2階の保育室へアクセスする螺旋階段 © 藤井浩司(TOREAL)

▲2つの保育室に挟まれたギャラリー © 藤井浩司(TOREAL)

▲2階からダイニングホールを見る © 藤井浩司(TOREAL)

プログラムとしては、40名程度のこどもと先生、保護者が集えるダイニングホールと4・5歳児のみが滞在する場所、そして先生たちが就業後もゆったりと時間を過ごすことのできるラウンジを用意。

▲エントランス前より南側外構を見る © 藤井浩司(TOREAL)

▲中2階のラウンジ下もダイニングホールと一体となっている © 藤井浩司(TOREAL)

ダイニングホールは、3.5mグリッドに45°の角度を振った逆末広がりの十字柱・梁を配し、水平・垂直方向への視界深度のグラデーションによって生まれる身体的距離感をつくりだした。それらを取り巻く家具やランドスケープによって、空間同士や内外を緩やかに接続し、森の中を歩くような自由なシークエンスを形成している。

▲北側ファサード。屋上の鐘「音の花」が周辺地域の新たなアイコンとなる © 藤井浩司(TOREAL)

▲ダイニングホール。右側の出入り口は、既存園舎と直結している © 藤井浩司(TOREAL)

さらに、こどもたちから大人まで、移動に伴うアイレベルの変化により、空間領域の解像度が変容していく。おおらかな空間でありながらも、ある秩序と可変性をもつ空間体験がこどもたちに対して日常とは異なる創造性を与えつつ、その中にも好奇心や愉しさを与えてくれる特別な空間とした。

▲左側門型の入口はダイニングホールへとアクセスする子供スケールのサブエントランス © 藤井浩司(TOREAL)

同園は前田のアトリエから徒歩5分の距離にあるそうで、現代のこどもたちを取り巻く状況が大きく変わっていく中で、地域で育まれる園児たちに対してどのような環境が大切なのか問い続けながら、今後もこどもえんつくしの豊かな空間づくりに関わりたいそうだ。End

▲2階保育室。中央の丸いヴォリュームはトイレブース © 藤井浩司(TOREAL)

▲西側ファサード © 藤井浩司(TOREAL)

▲子供スケールの小窓からは厨房が見える © 藤井浩司(TOREAL)

▲南東より見る © 藤井浩司(TOREAL)

▲鳥瞰全景。奥が既存園舎 © 藤井浩司(TOREAL)

▲前田 圭介

建築家プロフィール

1974年
広島県福山市生まれ
1998年
国士舘大学工学部建築学科卒業
2003年
UID設立
2018年~
広島工業大学教授、早稲田大学芸術学校非常勤講師/ ARCASIA建築賞ゴールドメダル2011 / 第24回JIA新人賞/ こども環境学会賞デザイン賞2013 /AR House 2016 Winner(UK) / グッドデザイン金賞2017 など国内外で多数受賞