エアコンを使わずに室内を涼しく保つ
ブリティッシュコロンビア大学が「Cold Tube」を開発

▲ 外装にはヒートポンプ(左)と冷却パネルを搭載し、熱帯のシンガポールでも熱放射による快適さをもたらす。
Photo credit:Lea Ruefenacht

連日続く猛暑により、日中だけでなく夜間もたえずエアコンを使用する人は多いのではないだろうか。そして、エアコンを一日中稼働させることで、地球温暖化や細菌拡散といったリスクを心配する人もいるだろう。

そこで、カナダのブリティッシュコロンビア大学は、エアコンを使わずに夏の暑さを乗り切るための新しい方法を紹介している。

▲ Photo credit:Lea Ruefenacht

研究チームが開発する「Cold Tube」は、長方形の壁や天井に取りつけるパネルシステムで、パネルに張り巡らされたチューブに冷水が循環することで、室内を涼しく保つことができる。

▲ Photo credit:Lea Ruefenacht

▲ 内部は、熱透過性の膜により放射冷却をもたらし、空気を冷やしたり結露を出したりすることなく快適さを維持する。
Photo credit:Lea Ruefenacht

高温の表面から低温の表面へと次第に移動していく熱放射を活用し、人がパネルの横や下にいることで、体温が冷たいパネルに向かって放射されることになる。これにより、気温が高くても、冷たい空気が体の上を流れるように、涼しい感覚が得られるのだ。

こうした冷却パネルは建築業界ではこれまで数十年にわたって使用されてきたが、「Cold Tube」の新しい点は、除湿システムを組み合わせる必要がないことだという。

暑い日にグラスに冷たいドリンクを注げば周りに水滴がつくように、建物の壁や天井を冷やすとパネルの周りの空気は乾燥せず、結露が発生してしまう。このため研究チームは、熱放射を透過させながら結露の発生を防ぐように、冷却パネルを包んで密閉する防湿膜を開発したそうだ。

▲ 研究チームが「Cold Tube」を実際に体験。
Photo credit:Lea Ruefenacht

研究チームは2019年、シンガポールにて実験用の屋外ユニットを建て、55人の参加者のほとんどから、「Cold Tube」によって平均気温が摂氏30度でも「涼しい」または「快適」だとの回答を得た。また、この防湿膜により、パネルも乾燥した状態を保つことができた。

このシステムを使えば、一般的なエアコンの電力消費を最大50%削減できるとしており、室内空間のほか、夏の野外イベントやバス停、市場などの屋外エリアでの活用を目指している。そして、COVID-19対策として、夏場に屋内で窓を開けて換気するときにも、涼しく過ごせる可能性も示唆している。End

▲ 研究チームのメンバー。左からLea Ruefenacht(SEC)、Dr. Kian Wee Chen(Princeton University)、Dr. Eric Teitelbaum(SEC and Princeton)、Prof. Forrest Meggers(Princeton)、Kipp Bradford(Princeton)、Prof. Adam Rysanek(UBC)。Photo credit:Nicholas Houchois