子どもレンズ 色がはぐくむ豊かな感性

公園の一角にしゃがみ込み、何かをまじまじと観察する子どもたち。その視線の先には食料をせっせと運ぶアリの行列。タンポポをぎゅっと握って大好きな先生にあげる子ども……。COVID-19による自粛生活も1年が経ちましたが、動植物の生命力あふれる様子や子どもの成長を通して季節は変わらず巡っていることをより強く感じています。

小さい子どもたちは、身のまわりにさまざまな刺激や発見を求め、日々活発で好奇心旺盛です。そんな子どもたちの目線に合わせて周囲を見渡すと、気にもとめなかった小さな発見や想像力にハッとさせられ、自由で豊かな感性に驚かされます。

外の世界には、ヒラヒラ舞う蝶、モクモク浮かぶ雲、夜空にキラキラ光る月、チカチカ点灯する信号など興味をそそられるものが溢れています。筆者の子どもも日々目を輝かせては新しい発見や探索を楽しんでいます。家の中に目を向けても、子どもが好んで繰り返し楽しむものはたくさんありますが、特に親しんでいるおもちゃや絵本に注目してみると、色や音の刺激を受けるものが多いことに気がつきました。

「虹色の積み木 アーチレインボー」(Grimm’s Spiel & Holz Design)。木でできた虹色の積み木は色や形を自由に組み合わせてアートオブジェのような立体にも、ぬいぐるみのおうちにもなる。想像力をふくらませることで何通りもの遊びが楽しめる。

生まれたての赤ちゃんの視界は、はじめはボヤーっとしていますが、だんだんと視力が上がり、形も鮮明に見えるようになります。人間が最初に認識する色は赤系のため、赤ちゃんや小さい子ども向けのおもちゃや絵本といった知育アイテムは、赤をはじめとしたはっきりした色使いが多いのです。筆者の子どもが興味をもって楽しそうに遊んでいるものも、カラフルで鮮やかな積み木や絵本などが多く、目立つ色を指差しながら「あか!」「あお!」と言葉を積極的に発しています。

「LEGO FRIENDS」(LEGO)。女の子に人気のシリーズ。スタンダードなレゴカラーとは異なり、パープルやピンク、ターコイズブルーなどが色の軸で、LEGO FRIENDSならではの世界観をつくり上げている。

東京大学の赤ちゃんラボが制作した絵本「もいもい」は、赤ちゃんや小さな子どもたちに人気です。赤ちゃんが好きそうと大人が選んだものではなく、研究結果をもとに、実際に赤ちゃんが選ぶプロセスを経た絵本としてつくられました。目玉のようなぐるぐるしたカラフルで不思議なキャラクター「もいもい」の絵は色・形・サイズ・数も多様で、文字は「もいもい」という擬音のみ。読み聞かせる大人もページごとに雰囲気の違うもいもいを見て、どんなもいもいを表現しようかなと、想像力を働かせながら声に出して読み進めます。

絵本

▲「もいもい」(作/市原 淳、監修/ 開 一夫)

保育園でも子どもたちはカラフルなもいもいの絵と大人の発する声を聞き分け、「もぉーーーーい」「もいもいもいもい…」「もーーーーい、もいっ!」と大人の真似をしながらそれぞれの感性を発揮し、イキイキともいもいの世界観を表現していました。

子どもたちも以前に比べて、外遊びの機会が減り、おうち時間が増えていますが、長く家の中で過ごす分、住空間の充実が大切だと感じています。子どもの健やかな成長を支えるおもちゃや絵本に目を向けて、インテリアに取り入れてみるのも良いかもしれません。そして、色の魅力や色を扱う創造的な遊びが、子どもたちの豊かな感性をはぐくむ良い機会になるのではないかと考えています。

私たちが日々扱う色は主に自動車に展開されていますが、街中で走るクルマにむかっても子どもたちが「あっ!」と嬉しそうに指を差してくれる、そんな色を創造できたら素晴らしいことだと思います。これからも、時には子どものような純粋な目と探究心をもって、イマジネーションの力が発揮されたカラーを創り出していきたいと思います。End