ディオールの「モダンと伝統の優美な融合」の精神を継承
nendoが「Chaise Medaillon 3.0」をデザイン

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

デザイナーの佐藤オオキが率いるデザインオフィス nendoは、ファッションメゾンのディオールのためにチェア「Chaise Medaillon 3.0」を手がけた。

ディオールが1946年にフランス・パリのモンテーニュ通り30番地に初の店舗を構えたとき、シンプルでモダンな内装でありながらも、そこにクラシカルな要素を添えたという。

創業者のクリスチャン・ディオールは、ヴェルサイユ宮殿にこそフランスの本質的な美意識が宿っていると考え、なかでもルイ16世が使ったとされる、楕円形の背もたれをもつ「メダリオン・チェア」を愛し、ブティックやファッションショーなどで頻繁に使用したそうだ。

以来、この椅子はメゾンのアイコンとして、香水ボトルや広告のビジュアルなどにも登場。そして、2020年のミラノサローネ期間中には、14組のクリエイターを招待し、このチェアからインスピレーションを得た新作が発表された。

nendoは、創業時の「モダンと伝統の優美な融合」という精神を継承しつつ、先端技術を用いて、クラシカルなチェアを再解釈。1800×1100 mmの一枚板で、厚みはわずか3.0mmのガラス板を使用した「Chaise Medaillon 3.0」を作り上げた。

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

今回は、通常はU字型にしか曲げられないところをC字型まで深く曲げられる手法を新たに開発。曲げ加工したガラス板を脚兼背もたれにし、これとは別にドーム状に成型した3.0mmの厚さのガラス板を座面とした。

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

ふたつの部材は、成型後に450℃の硝酸カリ溶融塩に浸漬し、冷却することで化学強化加工を施した。これにより、ナトリウムイオンからカリウムイオンへのイオン交換が行われ、表面が硬くなるだけなく、曲げ強度が増し、引っ掻き傷もつきにくくなっている。

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

また、背もたれと座面は、透明度の高いUV接着剤とシリコンコーキング材を使って接着。高い透明度を保持しつつ、ガラスとは思えない独特のしなりや柔らかさのある座り心地を実現した。

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

透明な椅子だけでなく、フロスト塗装を施した椅子や、ディオールのブランドを想起させるブラックやグラデーション状のピンクの椅子も製作。背もたれを楕円形に切り抜くことで、メダリオン・チェアの特徴が軽やかに空中に浮遊しているかのような表情を与えたそうだ。End

▲Photographer:Hiroshi Iwasaki

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