猫と人を区切る要素を排したスペース
「保護猫喫茶 necoma」

▲写真:牧口英樹

TANK/福元成武磯野信+小松素宏/明治大学構法計画研究室による「保護猫喫茶 necoma」は、東京都目黒区の学芸大学駅から徒歩十数分の住宅街にある、猫のいる喫茶と美術室である。

3階建テナントビルの最上階にあり、斜線制限の切り欠きが内壁の三面に直接表出していて、平面的には単純だが、立体的には少し複雑な形状となっていた。

開口部は多数あり、空間内の明るさも一様ではなかったが、これらがもたらす場の雰囲気の違いを捉えて、水廻りを集約した箱を既存躯体に対して斜めに据えている。

▲写真:牧口英樹

この斜めの箱は鉤形の平面を分割しており、玄関、ホール、厨房区画、飼養区画を箱の周囲に配置。それぞれの区画の仕切りはアクリルやパンチングメタルの建具とし、向こう側に意識が向くような設えとした。

ギャラリーからホールへ入ると、斜めの箱により逆パースの効いた空間が広がる。また、猫の見守りのため、スタッフの居る厨房からホールへの死角のない配置とすることで、箱の壁面はホール側のどこからも見え、イベント時のスクリーンやアート展示などに活用できるようになっている。

▲写真:牧口英樹

床壁天井は、猫や猫用グッズを引き立たせるため、すべて白色とし、建物の外から階段を登って店舗の中まで入ると、共用部の階段室の壁紙が白色だったことも相まって、視界から徐々に色が無くなっていくような印象をもつ。

▲写真:牧口英樹

スツール・机・キャットタワーは、コンクリートの空配管などに使われるヴォイド管を使用。猫のために作った居場所がそのまま人間の居場所にもなるような状態を目指し、大きさの違いによって、猫には隠れ家やキャットタワーとなり、人間にはスツールや机として使えるようになっている。

▲写真:牧口英樹

そのほか、段ボールを細かく裁断し、水に溶かして押し固め乾燥させると、段ボールに含まれる糊の成分だけで固形化することを発見。これを型枠に流し込むことで、コンクリートのような自由な造形ができ、壁付けのキャットステップを制作した。

▲写真:牧口英樹

▲写真:牧口英樹

necomaという店名は「猫との間合いを考える」がコンセプト。内装は、間仕切壁や檻といった、猫と人とを厳格に区切るような見えの要素を極力排することで、コンセプトの実現を目指した。End

▲キャットステップの製作過程 写真:福元成武

建築概要

名称
「保護猫喫茶 necoma」
設計・施工
株式会社TANK/福元成武+磯野信・小松素宏(明治大学構法計画研究室)
ディレクション
PAG.TOKYO Inc.
ロゴ・サインデザイン
スズキユカ/PAG.TOKYO Inc.
用途
猫のいる喫茶・ギャラリー・ワークショップ
設計期間
2020年3月~4月
施工期間
2020年5月~9月
竣工
2020年9月
延床面積
59.1m²
構造
S造