転んだときだけ柔らかくなる
Magic Shieldsの置き床「ころやわ」

高齢者の転倒骨折は近年増加しているという。たとえば大腿部近位部骨折は、日本で年間約20万件も発生しており、今後さらに増加することが予想されている。また、この骨折については、機能障害や生命予後の不良が生じたり、二次骨折リスクが高いとされ、医療・介護費は年間約2兆円にも達するそうだ。

この問題を解決するためにMagic Shieldsが開発したのが、転んだときだけ柔らかくなる置き床「ころやわ」である。ふだんはフローリングのように硬くて転びにくく、車椅子も使用可能。転倒などで大きな力がかかった時だけ柔らかくなって衝撃を吸収するクッション性を備えているのが特徴だ。

▲提供:エクセレント宝塚ガーデンヒルズ

同社はこの「ころやわ」を使い、東京医科歯科大学と共同研究を実施。高齢者を実際に転倒させ床材の効果を実験・実証することはできないため、有限要素法という数値解析手法を用いて、床材による「転倒衝撃吸収効果」と「脆弱性大腿骨近位部骨折予防効果」を検証したという。

▲CT有限要素解析による転倒モデルのシミュレーション

この手法では、実存する患者の大腿骨CT DICOMデータから、大腿骨の三次元モデルをコンピューター上に作成。転倒時に直接大きな外力が加わる大腿骨大転子部に、各種床材の物性データに基づいて作成した材料を接触させた転倒モデルでシミュレーションを行った。

そして、転倒時エネルギーと同等の落錘式衝撃試験(質量11kg、落下高23cm)を再現した動解析で、床材3種の大腿骨近位部骨折予防効果を比較検討した。

▲「ころやわ」による大腿骨近位部骨折予防効果のデータ

その結果、医療・介護施設で一般的に用いられるビニルシート(2mm厚)では骨折が生じるが、歩行・移動時には硬く安定している「ころやわ」(22mm厚)では、柔らかいが歩行・移動時に不安定性なスポンジマット(40mm厚)とほぼ同等の衝撃吸収効果(=転倒骨折予防効果)を示すことが実証されたそうだ。End