卒業式のシーズンに。隈研吾がはじめてデザインした服——公立小松大学のアカデミックガウン

卒業式のシーズンに、建築家・隈 研吾がデザインした公立小松大学のアカデミックガウンが発表されました。

現代の日本で、「式服」を身につけるという日はいたって少ないのではないでしょうか?ドレスコードも着物の格もうるさく言われなくなり、ジーンズでどこにでも行けるようになった今日、数少ないハレの服、それも一生に一度だけ身につける稀有な服のひとつが、卒業式に着用する大学式服、アカデミックガウンでしょう。

そんな特別な日の特別の服を、隈 研吾が公立小松大学のためにデザインしました。公立小松大学は2018年に開校した4年制の複合大学で、今年初めての卒業生を送り出します(卒業式は2022年3月23日)。またこのアカデミックガウンは、隈 研吾が手がける初めての服でもあります。

JR小松駅から徒歩1分にある公立小松大学中央キャンパス

日本の場合、礼服はいぜん和服の人気が高いですが、男女ともにスーツを着ることも増えてきました。このアカデミックガウンは袖のある着物や袴姿にもまたスーツの上でも違和感なく、しかも格調の高さや華やかさを演出してくれます。

デザインは「折り紙」をコンセプトにしており、直線裁ちの2枚の布の組み合わせで構成されているため、たたんだり持ち運ぶことも容易です。

2枚の長方形の布を組み合わせてできている。並べると正四角形に。

帽子のタッセルはガウンのストライプと色味を合わせている。

素材は小松マテーレの独自素材KONBU(コンブ)

小松マテーレはその名の通り、石川県小松市に1943年に創業したマテリアルのメーカー。独創的な新素材を開発しており、ヨーロッパの一流ブランドからスポーツウエア、また新幹線の車両連結部分や車両シートの素材まで多岐にわたっています。

小松マテーレで開発したKONBU(コンブ)というマテリアルは、ナイロン素材で、自立できるほどの独特の硬度がありながら、しかも軽いのが特徴です。ちょうどこのKONBUのハリ感がこのアカデミックガウンをつくるのに最適だったのです。昆布のようなドライ感を活かしながら、ガウンの素材に合うよう特別な加工が施されました。

ストライプの細やかな箔押しや、玉ねぎの皮といった天然素材を使って染め上げたスクールカラーのネイビーブルーの色など、日本ならではの細やかなものづくりと斬新なデザインが出会い、新しいかたちが誕生しました。End

ストライプの色は、厳かな金、銀、銅、ネイビー