自動変形によって吸引清掃と床拭きを両立させた、ルンバ コンボ j7+

筆者が『ルンバを作った男 コリン・アングル「共創力」』の取材のために、2019年秋にボストン郊外のアイロボット本社を訪れた際、CEOのコリン・アングル氏に尋ねた質問の1つに「ロボット掃除機で、吸引による清掃と床拭きを両立させることは可能か?」というものがあった。

アイロボットは、ロボット掃除機のルンバと床拭きロボットのブラーバが連携する仕組みを提供していたが、1台2役の、いわゆる2イン1タイプの製品には否定的だった。というのは、床を拭くパッドが湿った状態でカーペットの上などを走行すると、そこを濡らしてしまうだけでなく、パッド面の汚れを擦り付けて広げる可能性がある。そして実際にも、後発メーカーの2イン1タイプのロボット掃除機ユーザーからは、そういう難点を指摘するコメントが発せられている。両者が別々の専用機として存在することには、確たる理由があったのだ。

しかし、アイロボットは、日本で11月1日に発表された新製品の「ルンバ コンボ j7+」で、エレガントな解決法を見つけ出した。世界初の自動変形するメカニズムを組み込み、水拭きを担当するパッド部分が状況に応じて本体上部に持ち上がる「パッドリフティングシステム」によって、濡らしてはいけないエリアでは吸引のみの清掃を実現したのである。

しかも、本体のフォルムやサイズはベースとなったルンバ j7/j7+(+は、自動でルンバ本体からのゴミの収集と充電を行うクリーンベースが付属することを表す)とほぼ変わらず、水拭きのための機能もコンパクトにまとめられている。その変形の様子はスムーズそのもので、床面を自動判別して形を変える様子は生物的な雰囲気さえ感じさせる。また、パッドが上部に格納されることで、その交換作業も本体を持ち上げずに済むという副次的なメリットも生まれた。

アイロボットは、ルンバ コンボ j7+の発表に合わせて、これまで「iRobot Geneus」と呼ばれていたオペレーティングシステムを「iRobot OS」に改名し、掃除機がけと水拭きの設定を部屋やエリアごとに細かく行えるようにするなど、ハード面だけでなくソフト面でのインテリジェント化も一層進めている。今回の発表により、先の書籍の取材時にコリン氏が構想していたスマートホームの実現に、さらに一歩近づいた印象を受けた。End