直観力と確実なデータが交わるところ

この記事は、frogが運営するデザインジャーナル「Design Mind」に掲載されたコンテンツを、電通BXクリエーティブセンター、岡田憲明の監修でお届けします。

「クリエイティビティ」と聞いて、何を思い浮かべますか? カラフル? 直観的? 遊び心のあるビジュアルやアート?では、「データ」という単語はどうでしょう? おそらくパソコンの画面、ケーブルの束、グラフやスプレッドシートなどが思い浮かぶのではないでしょうか。

マーケティングの視点から見たときに、クリエイティビティとデータは、一見まったく関連性がないようにみえるが、左右の脳のように、私たちが考えるよりもはるかに密接なつながりを持っています。

企業が発するシグナルに的確かつリアルタイムに対応するには、クリエイティブな直観力と確実なデータ分析が必要です。

未来のマーケティングは「データ」と「直観力」の融合が鍵

frogは、ブランディングやマーケティングにおいてこの2つの要素を組み合わせることで、価値感・統一感・満足感の高いカスタマーエクスペリエンスを提供し、さらに、ビジネスとして成果を出すようにしています。

最近、私はCapgemini Research Institute (CRI) が発行した季刊誌「Conversations for Tomorrow」の第4号に寄稿しました。「The New Face of Marketing」(マーケティングの新たな姿)と題された今号では、変わりつつあるCMO(チーフマーケティングオフィサー)の役割について、さまざまな業界のトップリーダーが意見を述べています。

マーケティングの未来は、確かなデータの分析・解釈と、クリエイティブなかたちでそのデータをオーディエンスが自分に関連するものとして受け止められるような提示する、すなわち、データとクリエイティブな直観力をいかに融合していくかにかかっています。感情に訴え、共感を生むことでクライアントの信頼を高めることができ、それがブランドに対する信頼度の向上につながります。

データを活用したクリエイティブな手法

現在、データドリブンなリアルタイムマーケティングを手がけている人も、これまでとは違うデータの使い方を模索し、ブランド戦略やブランドアイデンティティの新しい手法を考案するために、クリエイティビティを高めていくことが必須になります。クリエイティビティを活用することで、データが重要な業務のスピードや柔軟性を高めることができます。それをはっきり示しているのが、CRIが行った直近のアンケート調査です。

※データドリブン:経験や勘だけでなく、収集したデータをもとに意思決定をする手法。

データドリブンマーケターの79%が他のマーケターよりもお客や市場のニーズに対してアジャイルな対応が可能と回答しています。「The New Face of Marketing」リポートにも、クリエイティビティを活用したデータドリブンマーケティングの利点として、「変化のスピードが速いトレンドにうまく対応できる」、「クライアントに合わせたパーソナルなアイデアを生み出せる」、「高度にターゲティングされたクライアントのエンゲージメントを可能にする新たなパラダイムにつながる」などが挙げられています。

このように、クリエイティビティとデータがしっかりと融合されている事例の1つが「ダイナミックバーチャル広告」という革新的な手法です。これは、AR(拡張現実)技術を使って放送チャンネルや視聴者のいる場所に合わせてターゲティングされたコンテンツを表示するものです。それにはクリエイティブの力とデータを扱うデジタルスキルが同じくらい必要とされます。

可能な限り多くのオーディエンスにリーチするためには、クリエイティブなコンテンツとそれを発信するために必要なテクノロジーを融合することです。さらに、消費者を取り巻くデジタル環境の中で、その広告をどこに配置すれば最も効果的なのかを検討するために、データを的確に分析することが求められます。

この技術はすでに現実の世界で活用されています。実際にどのように行われているかを説明しましょう。あなたは今、サッカーの試合をみているとしましょう。試合が行われているフィールドの後ろには電光掲示板があり、広告が表示されています。しかし、テレビで試合をみる人には、視聴している地域やチャンネルごとに異なる広告が映るようになっています。

テレビ局は、ダイナミックバーチャル広告技術を使って、視聴者に気づかれることなく、スタジアムの観客が見ているものと違うバーチャル広告を実際の広告の画像の上に重ねて、放送しています。この技術により、ターゲットとする視聴者に合わせて、より的確に広告出稿のスケジュールを調整できるようになります。

メタバースやその他の技術を視野に入れて、直観力を強化する

データドリブンなクリエイターも、コンテンツの制作にあたって本能的な感覚に頼るやり方を変えていく必要があります。協働によるクリエイティブプロセスと確実なデータを得るためのリサーチを有効的に組み合わせて活用するすべきです。そして、消費者の変化に対して、リアルタイムに、しかも共感を生み出すような形で対応するためには、クリエイティブな直観力とデータドリブンなリサーチが重要なのです。

今後、メタバースの技術が進んでいくことを考えると、消費者とブランドをより密接に結びつけるために、感覚を重視したバーチャル体験を創造していくには、データとクリエイティブの力を活用することが不可欠になっていくでしょう。

リアルタイムのデータを積極的に活用し、そこからインスピレーションを得て、新しいデジタルリアリティを構築するには個人の周辺環境を解き明かす必要があります。そのために、人がどこにいて、誰とどんな状況でかかわるかを理解したうえでメタバース内の世界を構築します。この新たな領域への探求をリードする優位なマーケティングチームは、説得力のあるストーリーを語れるデータサイエンティストと、リアルタイムなインサイトを活用できるマーケターがメンバーとしています。

クリエイティビティとデータとは、対立するものでもなければ、二者択一するものでもありません。この両方を活用できるのがマーケティングの新しい姿です。広告とメディアの新しい領域での成果を求める企業や組織のために、マーケターはクリエイティビティとデータが融合する地点に到達することができるし、到達すべきなのです。

クリエイティビティとデータの融合やCMOの新たな役割についてさらに知りたい方は、キャップジェミニ・リサーチ・インスティテュートのリポートをご覧ください。