500点をこえる受賞製品を紹介
キヤノンギャラリーのグッドデザイン賞企画展レポート

2022年12月に、キヤノン本社内にあるキヤノンギャラリーにてグッドデザイン賞企画展が開催された。第1回グッドデザイン賞を受賞した同社のプロダクトを含む約500点の受賞製品の紹介と、デザインプロセスの詳細を展示。

グッドデザイン賞を通してキヤノンデザインを振り返る

1957年、当時のキヤノンを代表するカメラであった「フィルムカメラL1」と「シネカメラ8T」が第1回のグッドデザイン賞を受賞した。それ以来、第三者から客観的にプロダクトを評価してもらうという観点から、キヤノンは長年同賞に応募してきた。約60年の受賞歴のなかには、同社のデザインの転換点を表すものもあり、キヤノンデザインの足跡を見ることができる。

▲第1回グッドデザイン賞を受賞したフィルムカメラ「L1」。

▲2021年度グッドデザイン・ベスト100を受賞したミラーレスカメラ「EOS R3」。プロダクトの機能や外観は大きく変化したものの、ブランドを象徴するディテールはデザインに残されている。

仮説と検証を繰り返す

プロダクトをユーザーの手に届けるまでに、デザイナーを含めて、開発者たちは数々の仮説と検証を繰り返してきた。企画展では、キヤノンならではのデザインリサーチの方法が紹介された。プロダクトの造形や機能性はもちろん、潜在的なニーズを分析するために、デザインチームは社外だけでなく、社員にインタビューをすることも多くある。彼らは社員でありながら、ユーザーでもある。デザインを具体化していくとき、社員のアイデアや意見が指針になることもあるからだ。さらに、製品がどんなに進化しても、一目でキヤノンのプロダクトだとわかるようにデザインアイデンティティが築き上げられた。デザインの統制や一貫性があるからこそ、直感的にプロダクトを操作できるのではないか。

▲キヤノン独自のアルゴリズムにより人物の表情を自動で認識し自動撮影できるカメラ「PowerShot PICK」。2021年度のグッドデザイン賞を受賞。

社会の課題をデザインで解決

企画展では、定番のカメラ、レンズ、プリンターや医療機器以外に、時代を表すようなプロダクトもいくつか見られた。SNSの普及に合わせて、タブレット用RAW現像アプリを開発したり、ウイルス感染症検査キットの識別をわかりやすくするためのパッケージデザインがあった。「デザインで課題を解決できれば、なんでもチャレンジしてみる」という精神を感じる。

そんな同社の技術とデザインの融合を強く感じさせるのが医療機器だ。全身用X線CT診断装置は、広い内径空間に改善することで、患者の心理的圧迫感を和らげる。さらに、小型化の実現によって、医療従事者がより使いやすくなった。

▲プロダクト以外に、近年、キヤノンはコミュニケーションデザインにも注力している。色面と花のイラストにより検査キットの種類を紐づけ、素早く識別できるようにした「ウイルス検査用キット」のパッケージデザイン。2021年度のグッドデザイン賞を受賞。

▲全身用X線CT診断装置「Aquilion Serve」。診断装置の圧迫感を和らげるために、本体の側面や正面を曲面で削り込んでいる。左右シンメトリーな半円弧形状を採用。2022年度のグッドデザイン賞を受賞。

同展は一般公開していないが、キヤノンが2022年に開催したデザインオンラインセミナー「Meet-up Canon Design 2022」のアーカイブ動画でキヤノンのデザインについて知ることができる。

グッドデザイン受賞の歴史を振り返ることで、キヤノンのデザインに対する考え方や価値観の変遷を見ることができた。伝統と進化のバランスのなかから、さらに新しいデザインが生まれるだろう。