完全な身体とは何かを問いかける アーティスト
シャワンダ・コーベットの個展「Down the road」

東京・渋谷区のギャラリーSAIでは、ロンドンを拠点に活動するアーティストシャワンダ・コーベット(Shawanda Corbett)の個展「Down the road(ダウン・ザ・ロード)」が2023年4月23日(日)まで開催されている。

コーベットは、陶器から絵画、写真、映像、音楽、パフォーマンスに至るまで、多様なメディアを横断し、イメージを構築する特異な方法で作品をつくる。これまでに、記憶や経験、身体と空間との相互作用について、複合的な創作活動を展開してきた。

同展では、映像や陶器、絵画など、合計41点の作品を紹介。その多くは、コーベットが育ったアメリカ・南ミシシッピの記憶や体験からインスピレーションを得たもの。作品を彩る色と線のフォルムは、記憶に残る人物の個性や、関わり合いから呼び起こされた感情、制作中に聴くジャズの影響など、自身の中にある物語を象徴的に表現している。

You didn’t see me hugged up with no one (From: “The Women Of Skip Avenue”), 68 x 19 x 19 cm, 2022, Glazed Stoneware

He’s your son (From: “The Women Of Skip Avenue”), 66 x 19 x 19 cm, 2022, Glazed Stoneware

展覧会タイトルの「down the road」は、南ミシシッピでコーペットがよく耳にした言葉で、アフリカ系アメリカ人の老人らが交わしていたミシシッピ訛りの会話の追憶に由来する。それは「特定のものを意図しない曖昧な方向性」を意味しており、そのニュアンスは同氏が育ったコミュニティを象徴しているという。

I’m your elder, you have to respect me, 77.5 x 56cm, 2022, Acrylic on Paper

Me and the boys, 77.5 x 56cm, 2022, Acrylic on Paper

今回の作品制作時には、アメリカの学者 ドナ・J・ハラウェイ(意識史およびフェミニスト研究を行う)のエッセイ「サイボーグ宣言」(1985)も参考にされている。エッセイのなかでハラウェイは「人間」と「動物」、「人間」と「機械」の間に構築された境界線がなくなり、現代の技術社会の発展によって、私たちは「サイボーグ」になったと説く。

コーベットは、自身の記憶や経験、有色人種の女性の視点から、同説を現実という枠に組み込み、完全な身体とは何か、そして、動物、人間、機械の並存からどのような新しい解釈(ハイブリッド性)がもたらされるのかを本展を通じて、来場者に向けて問いかけている。End

Shawanda Corbett|シャワンダ・コーベット

Shawanda Corbett SOLO EXHIBITION “Down the road”

会期
2023年4月1日(土)~ 4月23日(日)
時間
11:00~20:00(無休)
会場
SAI(東京都渋谷区神宮前 6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F)
詳細
https://www.saiart.jp/exhibition/exhibition21/index.html