坂 茂が設計を手がけた
森と水辺のヴィラ「Simose Art Garden Villa」

瀬戸内海を望む広島県大竹市に、建築家の坂 茂が設計を手がけたアート・オーベルジュ「Simose Art Garden Villa」が2023年4月にオープンした。下瀬美術館に隣接した10棟のヴィラとレストランが一体となった複合施設である。

「海辺の建築作品に泊まる」というコンセプトのヴィラは、木立に囲まれた「森のヴィラ」と水盤に面した「水辺のヴィラ」の2つのエリアからなる。「森のヴィラ」は、坂 茂がこれまでに手がけた別荘建築をリメイクしたヴィラ4棟と、同施設のために新たに設計・デザインされた「紙の家」「壁のない家」「十字壁の家」「ダブルルーフの家」「家具の家」の5棟で構成される。

「紙の家」は、10×10mの床に坂建築を象徴する再生紙の筒「紙管」110本(長さ2.7 m、直径28cm、厚さ15mm)がS字状に並び、柱の間からこぼれる日差しが心地よいヴィラ。

紙の家

「壁のない家」は、すべての壁をなくしてガラスの引き戸で仕切ることで、自然に溶けこむ透明な空間を創出。2枚の壁を十字に配置した「十字壁の家」では、壁そのものが建物の支柱となることで高床式の居住空間を実現している。

さらに、屋根と天井を切り離したダブルルーフ構造をもつ「ダブルルーフの家」、クローゼットや本棚といった家具を壁や柱の主体構造として用いた「家具の家」と、個性豊かな建築が静かな木立の合間に点在する。

キールステックの家

一方、海に面した「水辺のヴィラ」には、特徴的な断面をもつオーストリアの木製パネル「キールステック(Kielsteg)」を、壁や屋根など家屋全体に使用した5棟の「キールステックの家」が並ぶ。キールステックを短く切って積み上げたルーバーは、室内に軽やかな印象を与えている。

いずれも坂の思想や遊び心にあふれた建築で、構造から内装にいたるまで驚くような体験ができる。End

Simose Art Garden Villa

開業日
2023年4月1日
住所
広島県大竹市晴海2丁目10-50
詳細
https://artsimose.jp/villa/