WAAM技術を用いて製作した配管部材

エンジニアリング会社・日揮グループ傘下の日揮グローバルは、このほど炭素鋼材料を用いた3Dプリンタによる設計・造形を行い、従来の製造方法と同程度の品質で造形することに成功したと発表した。

これまで3Dプリンタ業界では、合金などの高級鋼における適用例は多い一方、プラント建設工事において最も多く用いられる炭素鋼についての造形例が少ないのが現状だとされる。そこで同社は、オランダのMX3D社と2021年7月から共同研究を開始。「WAAM技術^※」と呼ばれる手法を用いて炭素鋼から配管部材を造形し、強度試験により造形品質を確認した。

MX3D社製3Dプリンタ

^※WAAM技術は、金属材料として溶接用ワイヤを使用し、ワイヤをアーク熱源で溶融させて造形する3Dプリント技術。アメリカ国防総省が潜水艦の部品を造形するために導入を決めるなど、大型構造物の造形が可能だという特徴を有している。また、WAAM技術ならではの形状により重量を削減した造形物は、従来の圧延材を使用したH形鋼と比べて、圧延工程などにおけるCO2排出量を削減でき、気候変動への影響が小さいとされる。

さらに共同研究では、Autodesk社の機械加工向け3D CAD/CAMソフトウェア「Autodesk Fusion 360^®」に搭載されたジェネレーティブデザイン機能を使用することで、表面が滑らかな最適化形状を獲得。同研究では配管サポートの形状を最適化させ、使用する材料の重量の約3～4割の削減、崩壊荷重の2～6割の増加という強度向上も達成した。

これらの成果のメリットとしては、現場での構造物の造形による機器・配管部材の設計から製作・施工までのリードタイムの短縮、現場での複雑で自由度の高い造形の実現、再現性の高さによる寸法精度や品質の安定化、現場に動員する作業員数の削減など、プロジェクト遂行上のさまざまなリスク低減が見込まれている。

同社は現在、3Dプリンタのプラント建設工事への本格的な導入に向けて、3Dプリンタで金属部品を製作する上で大きなハードルとなる外面塗装や疲労強度など、同技術の実装をより具体化するための課題に取り組んでいる。