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18時間前
Serpentine 2025 Pavilion A Capsule in Time, designed by Marina Tabassum, Marina Tabassum Architects (MTA). Design render, interior view. Photo: © Marina Tabassum Architects (MTA). Courtesy Serpentine.
イギリスの美術館 サーペンタイン・ギャラリーは、サーペンタイン・パビリオン2025にバングラデシュの建築家 マリーナ・タバサムが率いるMarina Tabassum Architectsの「A Capsule in Time(時のカプセル)」を選出した。2025年6月6日(金)から10月26日(日)まで一般に公開される。
1969年ダッカ生まれのタバサムは、現代的なデザインを追求する一方で、社会や政治の課題、さらには環境問題にも向き合い、その土地の気候や文脈、文化、歴史などに根ざした建築を手がけている。年間のプロジェクト数を限定することで、建築規模の抑制にも意識的に取り組む。
マリーナ・タバサム © Asif Salman
タバサムのプロジェクトの多くは、ダッカ市内や周辺地域、さらにはバングラデシュ全土で展開されている。気候変動の影響を受けやすい脆弱な国であるバングラデシュにおいて、社会的に厳しい立場に置かれた人々の生活環境を改善するための建築を数多く手がけてきた。たとえば、「小さな家」を意味するモジュール建築「Khudi Bari」(クディ バリ、2020年~現在進行中)は、洪水が頻発するジャムナ川、メグナ川、ティスタ川の砂地に住む人々のために開発された低コストの住居であり、解体・輸送・再組み立てが容易な構造となっている。
Serpentine 2025 Pavilion A Capsule in Time, designed by Marina Tabassum, Marina Tabassum Architects (MTA). Design render, aerial view. Photo: © Marina Tabassum Architects (MTA). Courtesy Serpentine.
Serpentine Pavilion 2025 designed by Marina Tabassum, Marina Tabassum Architects (MTA). Design render, exterior view. Photo © Marina Tabassum Architects (MTA) Courtesy: Serpentine
今回のパビリオンは、南北に細長く伸びた構造物であり、中央にはサーペンタイン・サウスの鐘楼と一直線上に位置する中庭を配置。公園でひとときを過ごすイギリスの伝統や、木漏れ日が差し込むアーチ型庭園にインスピレーションを得ている。彫刻のような美しさを持つ4つのカプセル型の木造建築で構成され、内部には半透明のファサードを通して光が広がる。カプセルのひとつは可動式になっており、隣のカプセルとつなげて空間の変化を楽しめる設計だ。
タバサムは、空間の広さや光と影の相互作用から感じられる、建築の感覚的で精神的な効果を強調するとともに、南アジアで用いられるテント「シャミアナ」の歴史とデザインにも着目。竹の支柱に布をかぶせた可動式の構造物で、屋外での儀式やお祭りで使われている。今回のパビリオンもシャミアナのような開放性を備え、訪れる人々が語り合い、集い、音楽やパフォーマンスを楽しむ場として機能することが期待されている。