森の再生と回復の歴史を次代に
住友館

住友グループが構成する「住友 EXPO2025 推進委員会」が手がけた「住友館」は、森林の重要性と持続可能性を真正面から考え、コンテンツとデザインを通してシンプルな解答として示したパビリオンと言えるだろう。基本設計は、展示内容を含めた総合プロデュースも行う電通ライブと日建設計が担当し、実施設計は電通ライブと三井住友建設が担当した。 住友グループの発展の礎は、現在の愛媛県に元禄4(1691)年に開かれた「別子銅山」の経営にある。大規模な採掘作業と、精錬の燃料として銅山周辺で森林の伐採が続けられたため、周囲の緑は急速に荒廃。明治時代に入って植林活動が始められ、後に同地には豊かな生態系が戻ったものの、森の回復、再生には100年以上の時間がかかったという。現在「住友の森」と呼ばれ親しまれているこの森の歴史と先人たちの取り組み、知見を未来へつなぐことが、住友館の建築コンセプトだ。

外装に「合板」を中心に活用

建築デザインの核となるのは、ハイパボリック・パラボロイド曲面(双曲放物面)で構成する、屋根と壁面が一体化した外観だろう。彫刻的でエッジの効いた線で構成されていながら、面をひねることで生まれるカーブが全体の木目と相まって温かみと優しさを感じさせる。

担当した日建設計の白井尚太郎は、このデザインが「別子の山並みと森を抱く丘陵をイメージしたもの」だと説明する。外壁全体が9mm厚の構造用合板だけで成り立っており、少しずつ捩れていく下地に合わせて合板を曲げつつ、徐々に角度を変えて貼っていくことで双曲放物面を生み出している。