若手建築家による20の未来への提案

身体性を触発する休憩所+トイレ「fuku fuku」
天幕の生地は、遠くからでも見つけやすいように色鮮やかなグラデーションを描く。内部には視覚、触覚、聴覚を触発する、多様な人に開かれた空間が広がる。中央の休憩広場にあるネットを張ったすり鉢状のスペースに横たわると、光や風をよりいっそう感じられ、下から上がってくる冷気によってクールダウンも可能。ほかにトイレ、カームダウンルーム、ジェンダーレスゾーンには授乳室やおむつ替室なども。照明のシェードはペットボトルを再利用して製作している。
大西麻貴+百田有希(o+h)/大西麻貴(1983年愛知県生まれ)と百田有希(1982年兵庫県生まれ)により2008年o+h設立。主なプロジェクトに「シェルターインクルーシブプレイス コパル」「二重螺旋の家」など。第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展2023の日本館展示のキュレーター(大西)、副キュレーター(百田)を務めた。

愛らしい生き物のような存在を目指して

公募によって選ばれた建築家20組が設計したのは会場内の休憩所、トイレ、展示施設、ギャラリー、ポップアップステージ、サテライトスタジオといった20施設だ。全体の会場デザインコンセプト「多様でありながら、ひとつ」をもとに、それぞれがSDGs達成につながるアイデアを求められた。今年の春から秋までの約半年間の仮設ではあるが、もちろん、彼らの提案は万博のためだけではなく、未来を見据えた新しい建築の考え方そのものだ。大西麻貴と百田有希(o+h)が提案するのは、彼らが日頃から取り組むテーマでもある「愛される建築」だ。百田は次のように説明する。「持続可能な建築のためには、機能や性能を優先させた人工物ではなく、欠点や個性をもった生き物のような存在として建築を捉えることが大事だと感じています。それにより愛着が生まれ、人と建築の関係が近づき、手をかけて大切に使いたいという思いが育まれる。建築が永く生きることにつながるのではないかと考えています」。