デザインを専門とする、あるいはデザイン周辺にいる人々が、自らのデザイン観とともに、世の中のさまざまな事象を語り、考える。

“気にしなくてもよい”デザイン

今年もエアコンの季節となった。エアコンはさまざまな機能が開発され、魅力的な意匠が提案される。室内ではますます快適な空間が実現される一方で、それと引き換えに屋外に熱い空気を排出する室外機は魅力的な意匠が提案されることもなく、注目されることはほとんどない。デザインは、ユーザーエクスペリエンスに着目をして、ユーザーが見ている範囲の生活の中で“できること”を広げてきた。しかしその陰で“気にしなくてもよいこと”とされてきたことは少なくなく、エアコンのような身近なところにもその構図が見られることを私たちは見落としがちである。なぜなら、そのこと自体がデザインが提案し実現してきた価値であったからだ。家の外で室外機が熱い空気を吐き出しても、デザインはユーザーが意識をそこに向けずに済むようにすることで快適な生活をつくりあげてきた。