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2025.07.14 12:00
「グラン・パレ(Grand Palais)」
1900年開催のパリ万国博覧会のために建てられた「グラン・パレ(Grand Palais)」が、2025年6月にリニューアルオープンした。
フランス・パリには、歴史ある建築物がいまもなお数多く残されている。そのひとつが「グラン・パレ」である。ボザール様式の建築として構想され、総監督シャルル・ジロー(Charles Girault)をはじめ、アンリ・ドゥグラン(Henri Deglane)、アルベール・ルヴェ(Albert Louvet)、アルベール・トマ(Albert Thomas)という4人の建築家が設計を担当。芸術の歴史と産業の繁栄を称えるため、ガラスや鋼鉄といった近代的な要素を用いて仕上げられているのが特徴である。
グラン・パレは1世紀以上にわたり、フランス文化を発信する国際的な舞台として使用され、ファッションショーや展覧会などのイベント会場として親しまれてきた。しかし、老朽化が進み、2000年代の初頭には修復工事を実施。2021年にはさらなる大規模な修復工事のため、再び閉館を余儀なくされた。
今回の改修では、大勢の来場者を迎え、なおかつ円滑な展覧会の運営を支えるべく、パリに拠点を置く建築事務所 Chatillon Architectesの手により、国際的な基準を満たした展示会場へと生まれ変わった。
リニューアルでは、均整の取れた構造や空間の広さ、豊かな自然光、淀みのない動線を再評価するとともに、現代風のアレンジを加えて、建築それ自体がもつ美しさを改めて強調。個々の空間のつながりを確保しつつ、南北方向および東西方向の広々とした眺望を活かし、力強い建築の再生を目指した。これにより、中央にある「Nef(身廊)」を介して、北はジャン・ペラン広場から南はセーヌ川までがつながる散策路が完成した。
© Chatillon Architectes
修復にあたっては、3000点以上のアーカイブや測量図、ポイントクラウドを駆使し、建物全体を3Dモデル化して把握することで、細部にわたる課題にも対応。技術面や物流面での運用が向上し、来場者を迎え入れる体制が整った。また、「Nef」の床には断熱システムを導入し、室内の熱を逃がさなくすることで、展示施設としての稼働時間の延長にもつながった。
また、かつて乗馬場があった場所には子ども向けのスペースを設け、地階の一部も見学可能なエリアとして整備。フランス国立美術館連合とグラン・パレ内の科学博物館「発見の殿堂」が連携して、「芸術と科学」をテーマとした青少年向けの展覧会も定期的に開催されている。