インハウス組織の再設計
分業と連携を進化させる仕組み

メルカリと聞いて、強力なデザイン組織を想起する人は、まだ多くないかもしれない。しかし同社では近年、CXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)制度の導入をはじめ、デザイン、プロダクト、エンジニアリングを横断する連携体制を築き、プロダクト開発の全過程にデザインが組み込まれる構造を整えてきた。急拡大するプラットフォームと向き合いながら、メルカリが追求するのは「持続可能な成長」と「普遍性あるUX」の両立。その内実を2024年にCXOへ就任した成澤真由美に聞いた。

2021年のリブランディングにあたって、メルカリとTakram の協働で制作されたキービジュアルのひとつ。ロゴを中心に、生活のあらゆるモノを象徴するアイコンが赤と青の2色で軽やかに配置され、メルカリがつなぐ循環型経済と多様な価値の広がりを視覚化している。

デザイナードリブンなテックカンパニー

成澤はプロダクトデザイナーとしてキャリアをスタートした。前々職でのエンターテインメント中心のサービスではなく自分の生活シーンに重なるものにチャレンジしたい、かつスタートアップを自らプレーヤーの一員として経験したい、と新進のフィンテック企業へ。しかしスタートアップでは物事は思いのほか柔軟に進まず歯痒さを感じていたところ、メルカリの資金移動業(現在の「メルペイ」)参入というニュースが飛び込んできた。

「エンジニアの企業だろうとイメージしていたのですが、始まりはすべてデザイナーのプロトタイピングからという感じで、デザインは当初から重要視されていた領域でした。デザイナーがなぜこのデザインをベストと考えるのかに対して、ロジカルに説明できればエンジニア側も自分の行動に反映していくというように。これだけ大きな企業で、それも失敗が許されない金融の領域で、デザイナードリブンでやっていたというのは今思い返すとすごいなと思います」。