大丸・松坂屋が包材のデザインを一新
三澤遥による新たなシンボル「百様図」が誕生

Photos by 北村圭介

大丸松坂屋百貨店はこのほど、同社が掲げるテーマ「多様な価値観が認めあい重なりあう豊かさ」のもと、「百様図」と名付けられた新たなヴィジュアルアイデンティティを策定した。これをもとに、包材のデザインを一新。大丸では35年ぶり、松坂屋では23年ぶりのリデザインとなる。 同社は、1717年創業の大丸と1611年創業の松坂屋が2007年に経営統合し、2010年に誕生した百貨店である。現在は全国の主要都市に15店舗を展開し、各地域とのつながりも深いことから、店舗ごとに独自の個性を育んでいる。

それは一見すると「バラバラ」にも見えるかもしれない。しかし「つないできた歴史」「それぞれの地域性」「時代の空気感や瞬間の美しさ」「お客様への心配り」といった各店舗の価値観と、顧客一人ひとりの多様な価値観を重ね合わせることで、豊かで美しい調和が生まれる。同社はこのありようを「百様」と名付け、百貨店としての目指すべき姿ととらえている。この「百様」という価値観を形にしたのが「百様図」である。

「百様図」

これまでの大丸と松坂屋の包材は異なるデザインだったが、デザイナーの三澤遥が手がけたデザインでは、「兄弟のように似ていて、それぞれが個性を持つデザイン」が表現された。そして「ふたつの屋号の歴史が今後も受け継がれていくように」との思いが込められている。

大丸のシンボルマークから丸を、松坂屋のシンボルマークから四角を抽出し、シンプルな形によって模様を構成。紙にプロッターで丸と四角の穴を開け、それらを組み合わせながら柄の美しさを探った。組み合わせは無数にあるなか、1年以上かけて膨大なスタディを重ね、議論をしながら導き出したという。大丸は丸が一番手前に、松坂屋は四角が一番手前にくる図柄となった。

大丸

松坂屋
2025年7月30日(水)より一部の売場で配布開始。 大丸 11店舗:心斎橋店、梅田店、東京店、京都店、神戸店、札幌店、須磨店、芦屋店、下関店、福岡天神店、高知大丸 松坂屋 4店舗  名古屋店、上野店、静岡店、高槻店 ※ショッピングバッグは大丸・松坂屋それぞれS・M・L3種類を用意。

また、色もそれぞれのシンボルマークから大丸は緑(ピーコックグリーン)を、松坂屋は青(ロイヤルブルー)を選定。それぞれメインカラーを際立たせながら、4色で構成。共通するピンクベージュが全体に統一感を生んでいる。

重ねた紙を真正面から撮影し、フレキソ印刷によって印刷。紙の重なり部分に出る陰影も写し出すことで、色に深みを、模様に立体感を与えている。フレキソ印刷はズレやすい印刷技法のため、多色を正確に重ねるには高度な調整が必要だったという。しかしそれによって紙の質感を生かしたあたたかみのある表現が生まれた。
百様図のウェブサイトでは、手を動かしながら模様がつくられたデザインプロセスを追体験することができる。制作はmount

百様図は具体的なものを表した模様ではない。しかし近づいたり離れたりして見ると、不思議と花のようにも建物のようにも見えてくる。三澤は「見る人それぞれに、さまざまな情景が浮かぶようにデザインした」と語る。

ショッピングバッグと包装紙は2025年7月30日(水)より一部の売場で配布が開始されている。さらに百様図は今後、包材にとどまらず、さまざまなかたちで展開されていく予定だ。End