NEWS | コンペ情報 / プロダクト
1分前
▲ グランプリ:品田 聡「ライン印」
2025年10月、一般社団法人未来ものづくり振興会は「18th SHACHIHATA New Product Design Competition(シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション)」の受賞作品9点を発表した。今年は過去最多となる1,681件の提案が寄せられた。審査員は、中村勇吾、原 研哉、深澤直人、三澤 遥、ゲスト審査員の大西麻貴(建築家)、特別審査員の舟橋正剛(同法人代表理事)の6名。
今回のテーマは「つながるしるし」。思いがけないタッチポイントが新たな創造の原点となることに着目し、これまでにない“つながり”を生み出す「しるし」のかたちを募った。回を重ねるごとに「しるし」の概念が広がるなか、今回は「誰かと一緒に使いたい」と感じさせるような、人と人との関係性を可視化する温かな提案が多く見られたという。
グランプリに輝いたのは、品田 聡による「ライン印」。シンプルな一本の短い線が押せるハンコで、線同士をつなげたり、模様のように組み合わせたり、手書きの文字や印刷物に線を添えることができる。審査員からは「ストロークで描く線をハンコとして『押す』というのはありそうでなかった体験。みんなが見落としていた面白さを最小限の手さばきですくい上げているところにエレガントな良さを感じた」(中村)、「一本の線を押すという行為のシンプルさに名前や印鑑から離れたしるしの象徴性を感じた」(原)、「線は押し方ひとつで対象をクロスアウトすることもハイライトすることもできる。最小の表現で最大の意味の可能性を示している」(深澤)と高く評価された。
▲ グランプリ:品田 聡「ライン印」
準グランプリは、畠中正太郎「hitohira」と、千勝美南+中嶋琴子「どすこい!シート」の2作が選ばれた。
「hitohira」は、アクリルの中に浮かぶ無数の線が、上から覗くとひとつの名前を描き出す印鑑。「印鑑の黒い円柱のイメージを払拭すると同時に、真上から見ようとすることで名前の向きを間違えることなく押すことができるという機能も持たせた素晴らしいデザイン」(原)、「画数の多い名前と少ない名前では横から見た時の印象が変わるので、物としての佇まいからも名前の量感のようなものが伝わってくる」(大西)と評された。
▲ 準グランプリ:畠中正太郎「hitohira」
「どすこい!シート」は、レジャーシートを広げればそこが土俵になるという提案。「持ち運べるメディアにしてどこにでも展開できるようにしたところにアイデアとしての可能性がある」(中村)、「本当にすごいのはしるしを『地面に押した』こと。シヤチハタのコンペとして、その発見に意味を感じた」(深澤)と、遊びの要素とともに「しるし」の本質を捉えた点が評価された。
▲ 準グランプリ:千勝美南+中嶋琴子「どすこい!シート」
審査員賞には、離れて暮らす人の”気配”を灯りで感じさせる「気配灯」(中村賞)、全国のユニークな苗字を楽しく学べる「苗字かるた」(原賞)、赤ちゃんのほっぺたのように柔らかく、手のひらのぬくもりで想いを伝える「Pum!」(深澤賞)、トリの愛嬌ある姿と名前を組み合わせた「ハンコドリ」(三澤賞)、印鑑と防災用ホイッスルを組み合わせた「笛印鑑」(大西賞)の5作品が選ばれた。特別審査員賞には、マスキングテープの端に矢印を印字する「YA.JIRUSHI→」が選出された。
▲ 審査員賞(中村賞):北島 鮎 鹿島理佳子「気配灯」
▲ 審査員賞(原賞):マシモモモコ「苗字かるた」
▲ 審査員賞(深澤賞):濱口真里「Pum!」
▲ 審査員賞(三澤賞):徳山 洋「ハンコドリ」
▲ 審査員賞(大西賞):松村佳宙「笛印鑑」
▲ 特別審査員賞:松尾清晴「YA.JIRUSHI→」
印を押すという行為を通じ、記号性や関係性を再考する今回のコンペは、”しるし”がもたらす新しいつながりの可能性を提示している。