ジェームズ ダイソン アワード2025の国際最優秀賞を発表 
水質モニタリングデバイスとスマートキーボードが受賞

ジェームズ ダイソン財団は、国際学生デザイン・エンジニアリングアワード「James Dyson Award(ジェームズ ダイソン アワード)」の2025年度国際最優秀賞を発表した。サステナビリティ部門でAIを活用した水質モニタリングデバイス「WaterSense」、メディカル部門でパーキンソン病患者のためのスマートキーボード「OnCue」が選出された。各受賞者には賞金30,000ポンド(約610万円)が授与される。

ジェームズ ダイソン アワードは2005年に創設され、今年で20年を迎えた。これまでに400件を超える学生発明を支援し、総額150万ポンド以上の賞金を授与してきた。2025年度は世界28の国と地域から2,100件を超える応募があり、環境、医療、社会課題といった多様なテーマで革新的な提案が寄せられた。ジェームズ・ダイソンは「受賞者たちは現実の課題に実用的かつ独創的な解決策を示した。彼らの発明は、次世代が未来をどう変えていけるかを教えてくれる」と述べている。

AIを活用した水質モニタリングデバイス「WaterSense」

サステナビリティ部門の最優秀賞を受賞した「WaterSense」は、ポーランド・ワルシャワ工科大学博士課程のフィリップ・ブドニーによる自律型の水質モニタリングデバイス。水流発電で稼働し、紙製のセンサーでpH値、溶存酸素、硝酸塩、金属類、マイクロプラスチックなど20以上の水質指標をリアルタイムに測定する。AIがデータを解析し、最大72時間先の汚染を予測することも可能だ。

従来の手動による断続的な検査とは異なり、継続的かつ高精度なモニタリングを実現。現在ポーランド国内20カ所で実証実験が進行中で、ブドニーは「2026年までにヨーロッパ全域でのネットワーク構築を目指している」と語る。

パーキンソン病患者のためのスマートキーボード「OnCue」

メディカル部門で選ばれた「OnCue」は、オランダ・デルフト工科大学を卒業したイタリア出身のプロダクトデザイナー、アレッサンドラ・ガッリが開発したスマートキーボード。パーキンソン病患者のタイピングを支援するために設計され、キー入力に合わせて振動や光のフィードバックを返すことで、動作の停止や誤入力を軽減する。

AIによる入力予測機能や、症状の変化に応じて振動や照明をカスタマイズできる設計が特徴。ゲーミングキーボードに着想を得たコンパクトな分割型デザインで、Bluetooth接続により多くのPCに対応する。ガッリは今後、製品化を進めるとともに、アルツハイマー病やジストニアなど他の神経疾患への応用も視野に入れている。End