NEWS | 建築
2025.11.20 17:04

「The Grand Ballroom」外観(夜間)。開口部からは内部の活動が透け、活気ある文化拠点としての姿を示す。© MVRDV
オランダの建築設計事務所MVRDVが設計した複合アリーナ「The Grand Ballroom」が、アルバニア・ティラナで実施されたアスラン・ルシ・スポーツパレスの国際設計コンペで最優秀案に選ばれた。直径100メートル超の球体を基本形とした構造で、内部に6,000席規模のアリーナ、商業空間、ホテル、住宅を重層的に収める大胆な構成が高く評価された。

周囲の都市景観に強い存在感を放つ「The Grand Ballroom」。© MVRDV
プロジェクトでは、限られた敷地に複数の都市機能を統合することを目指し、まず基壇部※に段状の公共プラザを配置し、その上層にアリーナ、さらにその上にホテルや住宅を重ねる積層構成を採用。外部へ向かって開かれた段差は、日常的な滞在やイベント利用を誘発する都市の“縁”となり、最上部の住戸には広いテラスが設けられた。建物の内部で都市・スポーツ・居住が立体的に接続する計画で、新しい複合施設のあり方を示した。
※敷地面より一段高くつくった建物の基礎

中央に広がる円形アリーナ空間。観客席が立体的に積層し、スポーツやライブイベントを包み込むダイナミックな内部構成となっている。© MVRDV
MVRDVの共同創設者ウィニー・マースは、この球体構造の着想について「スポーツに用いられるボールの象徴性と、啓蒙期のドーム建築を重ね合わせたもの」だと語る。ボールの形状がもつ象徴性と祝祭性に、機能性を組み合わせることで、人々が参加しやすい建築体験を生み出すことが狙いだ。スポーツと市民コミュニティの新たな“聖地”となり、市内外から人々を自然に引き寄せる“器”として構想された。

球体内部に設けられた大きなアトリウム空間。自然光が降り注ぐ開放的な半屋外空間で、緑化されたテラスが市民の新たな憩いの場となる。© MVRDV
ティラナにおいて、都市再生計画「Tirana 2030」に基づく開発が進むなか、本プロジェクトはその中心的なランドマークとなり得る存在である。「The Grand Ballroom」は、裏表のない、360度どこからでも認識される建築として、都市の新たな記号となることを目指している。![]()












