NEWS | プロダクト / 工芸
8秒前

「REPLICA / Vintage」一度仕上げた表面を意図的に研磨し、下層を露出させたもの。時間の堆積や使用痕を想起させる質感は、完成と未完成のあいだに留まる。継承を「時間を含んだ状態」として示す試み。
2025年12月12日(金)から14日(日)に開催されたDESIGNTIDE TOKYO(Week 2: Main Exhibition)にて発表されたプロダクト「REPLICA」は、静岡に受け継がれてきた郷土玩具「静岡だるま」を起点に、継承のあり方そのものを問い直す試みである。指物職人としての経験を持ち、現在はプロダクトデザイナーとして活動する石上諒一による本作は、張子だるまの原型を3Dスキャンし、同一形状の桧木地へと置き換えたうえで、異なる加飾を施すというアプローチを採っている。

「REPLICA / Shu」だるまの象徴的な色を、均質な朱ではなく漆の厚みとして捉え直した一体。反射する艶が輪郭を強調し、造形そのものの強度と存在感を引き出している。
素材には静岡県産の桧を用い、NC加工によって原型を忠実に再現。その上に、漆(真塗・溜塗)、朱塗、茶染(駿河和染)、研磨など複数の仕上げを重ねることで、「同じ形でありながら異なる気配」を立ち上げている。量産と手仕事、過去と現在、地域と個人といった対立項を横断しながら、「継ぐ」という行為を完成形ではなくプロセスとして提示する点が特徴だ。

「REPLICA / Tame」透過性のある溜塗により、桧木地の陰影と年輪がほのかに滲む。光の角度で表情が変わり、量感と奥行きが同時に立ち上がる仕上げにより、面の起伏が最も静かに、感じ取れる。
静岡のだるまづくりは、城下町に根づいた紙文化と職人の往来によって育まれ、明治期以降、富士・毘沙門天のだるま市へと系譜を広げてきた。本作はその歴史的文脈に敬意を払いながら、単なる復刻や模倣にとどまらず、「写しながら問い直す」という態度を通して再構成されている。

「REPLICA / Hinoki」静岡県産桧をNC 加工し、木地に現れた削りの表情と木目をそのまま生かしている。データ化された形状と天然素材の個体差が重なり合い、素材の性質が率直に表れている一体。

「REPLICA / Chazome」茶の産地に根づく染色文化を用い、桧木地を茶染で着色した一体。色むらや滲みが表情として現れ、素材・土地・手仕事の関係を可視化している。
「REPLICA」は、伝統工芸を保存対象として固定化するのではなく、素材・技術・テクノロジーの関係を編み直すことで、未来へと手渡すための新たな継承像を示す試みだ。地域文化と現代デザインの交点が垣間見えるプロダクトとして、DESIGNTIDE TOKYO 2025 Marketにて、現在販売中である。![]()
DESIGNTIDE TOKYO 2025 Market
- 会期
- 2025年12月18日 (木) ~ 12月21日 (日)
- 会場
- 東京都港区南青山4-18-16 フォレストヒルズ ウエスト 1F












