医師、エンジニア、デザイナーの
連携が生み出した、医療現場用
飛沫感染防止フード

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

米国ボストンの建築家エリック・ホーウェラー氏(Eric Höweler)とハーバード大学大学院のチームが地元の医師たちを支援しようと、医療処置時の飛沫感染を防ぐためのフード「Patient Isolation Hood」を開発しています。

SPREADはこう見る

「Patient Isolation Hood」は、1枚の透明なプラスチックシートでできており、切れ目の入った部分を組み立てるとドーム型のフードが完成します。患者の頭部にフードを被せ、医者は2つの穴に腕を通してフード内で医療処置を行なえるため、患者からの飛沫感染を防ぐことができます。

ホーウェラー氏は、医療現場のために何ができるかを思案していましたが、例えばフェースシールドを個人が3Dプリンターで制作しても、大企業の製造ラインでつくる速度と量にはかなわないと考え実行しませんでした。そんな時、医療処置中に医師や医療スタッフと患者を隔てるフードに需要があることを知り、地元の病院にその必要性を尋ねてまわりました。そこでマサチューセッツ総合病院と出会い、プロジェクトがスタートしたのです。

まず、ZoomやSlackを使ってチームメンバーである医師、エンジニア、デザイナーから意見を募り、プロジェクトの立ち上げから9日でプロトタイプが完成。マサチューセッツ総合病院で手術現場を想定したシミュレーションを実施することができました。驚くべきその速さは、チームの優れた連携プレーによるものでしょう。

この提案は、医療現場の最前線で求められていた機能をかたちにしたものです。その機能を最大限に高めるためには、技術と同様に造形の力も必要とされました。機能性を突き詰めた道具は、例えば、実験で使われるビーカーやピンセット、シャーレなどもそうですが、かたちに一切無駄がなく、機能に徹しているからこその美しさを感じます。

実用化されたという情報はまだ入手できていませんが、このような地道で着実に積み上げていく活動こそ尊敬に値します、今後の展開を、目を離さずに追い続けていきたいと考えています。End

Eric Höweler
ハーバード大学デザイン大学院、建築科の准教授。2008年からテクノロジーなどに焦点を当てた講義を行なっている。

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。