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2025.09.01 18:38
足掛け3年を費やしてヤンマーが自社ブランドの認知向上を試みた。その手段は、インハウスが中心となった「オリジナルアニメ番組の制作」という策だった。ゼロからの企画立ち上げ、社内に前例のないロボットデザイン、外部クリエイターやスタジオとの協働。異例ずくめだったプロジェクトの狙いを、統合プロデューサーの長屋明浩とプロジェクトを現場でリードしたグラフィックデザイナーの印田千容に聞いた。
産業機械メーカーが手がけるロボットアニメ
民放各局の深夜帯は、優れた日本発アニメーションがお披露目される場だ。時間帯が影響する視聴者の少なさは問題にならない。放映後に複数の配信サービスで視聴が可能になり、徐々に話題を集めていく作品も珍しくない。
今春、各種配信プラットフォームに「未ル」という2文字が描かれたバナーが現れた。どうやらロボットが出てくるSFアニメだとわかる。各話が約30分、全5話のオムニバスストーリー。プロデュースはヤンマーホールディングスとあるが、物語内で自社製品が宣伝される気配はない。
それぞれの回はテーマもさまざま。宇宙デブリ問題、熱帯雨林の破壊、AIに脅かされる人間の創造力、地域紛争のエスカレート、生態系が滅びる未来の地球……その世界で苦悩しながら懸命に生きる人々がクローズアップされる。毎回、主人公に寄り添うキャラクターが登場するのだが(新人女性宇宙飛行士、中年体型の男性会社員、さらにオオワシなど)、その正体は武器を持たないロボット「MIRU」。何かを変えようとする人の願いによって姿を現し、困難な事態を解決すると去っていき、再び人類を見守る。