NEWS | 展覧会 / 建築
2025.10.10 11:18
「Humanise Wall(ヒューマナイズ・ウォール)」Photos by Yongjoon Choi
韓国・ソウル市で、アジア最大級の建築フェスティバル「第5回ソウル建築都市ビエンナーレ」が9月26日に開幕した。会期は54日間にわたり、世界各国の建築家やデザイナー、都市計画の専門家らが集い、「人と地球のための建築のあり方」を問いかける場となっている。
同ビエンナーレの総合ディレクターを務めるのは、ロンドンのヘザウィック・スタジオを率いる建築家トーマス・ヘザーウィック。建築分野を超えて、韓国系アメリカ人シェフのエドワード・リーやイギリスのファッションデザイナー ステラ・マッカートニー、さらにはヒュンダイ自動車の製造チームなど、多彩な参加者が招かれている。会場では、38カ国から集まった110人の建築家が手掛けた400の建築プロジェクトが展示される。
トーマス・ヘザーウィック
メイン展示は「ヒューマナイズ・ウォール」と呼ばれる、全長約90メートル・高さ4階建ての巨大なインスタレーションだ。1,428枚の鋼鉄タイルには、建築家やデザイナー、市民たちの経験やアイデアが刻まれている。中央で180度ねじれた壁面には、「思考を変えるための方法」を示すマニフェストが掲げられ、遠景と近景の両方から眺めることで、新たな発見やディテールに気づける構成となっている。
ヘザーウィックは「分断が広がるいまの世界で、人と人のつながりを取り戻し、誰もが大切にされていると感じられる建物が求められています。このビエンナーレは、世界中のひとびとが“より良いものを夢見る”ための招待状なのです」と語り、建築の社会的役割を強調した。
会期中は、ソウル都市建築館を中心に4つの展覧会を開催。市民が参加した草の根プロジェクトを紹介する展示では、建物が人に与える感情や影響を探り、未来の建築像を提示。「Emotionally yours, Seoul」では、建物の写真やそこから感じた印象を一般から募り、デジタルアート作品として発表する参加型プログラムが行われる。
「Humanise Wall」が展示されたソンヒョン・グリーン・プラザで、さまざまな人々が提案した異なる建築ファサード案が設置されている。
ソウル市 未来都市空間企画局の林 昌洙(イム・チャンス)局長は「ソウルビエンナーレは、市民の視点や参加を通じて、都市をより魅力的で住みやすい場所にするフェスティバルです。私たちは、市民とともに歩き、観察し、そして未来の都市を思い描くという共有体験を楽しみにしています」と語る。本ビエンナーレは、建築と都市の関係を改めて考える場として、来訪者に都市の未来を考えるきっかけを与える場となるだろう。