パントン展で、初めてデザインの意図を知る

ファンタジー・ランドスケープ(1970年)

ファンタジー・ランドスケープ(1970年)

東京オペラシティアートギャラリーで始まった、デンマークのデザイナー、ヴェルナー・パントン(1926〜1998年)の展覧会。「パントン・チェア」に代表される奇抜なかたちと極彩色。パントンの家具と言えば、こんなイメージばかりを抱いていたが、

フライング・チェア(1963年)

フライング・チェア(1963年)

実は機能を最優先し、当時の最新技術を研究、人間そのものに着目しながら、さまざまなしがらみからの解放を目指して空間づくりを探求していたことが、展覧会を通じて明らかにされている。

3Dカーペット(1969年)

3Dカーペット(1969年)

興味深いのは、1970年のケルン家具見本市における展覧会「ヴィジョナ2」で発表された「ファンタジー・ランドスケープ」の再現展示。「未来のインテリア」をコンセプトに掲げた空間は、現在でも約30年前同様に未来感を漂わせているが、鍾乳洞のような、家具と空間が一体となった場に身を置くと、外から眺める以上の居心地の良さ。大人たちはくつろぎ、小さな子供はあちこちを這い回り、少し大きな子供となると自分の背丈よりも高い位置によじのぼる。ほかにも、「3Dカーペット」に横になりながら見ることのできる映像コーナーなどもあって、「座れない」「触れられない」ことの多い家具の展覧会にあっては稀な構成だろう。

左:ピーコック・チェア(1960年頃)、右:ワイヤー・コレクション(1959年)

左:ピーコック・チェア(1960年頃)、右:ワイヤー・コレクション(1959年)
An exhibition of the Vitra Design Museum, Weil am Rhein, Germany
All images (C)Panton Design, Basel

そのほか、スケッチや図面、宣伝素材などの資料が随所に公開されている。また、家具だけに止まらず、レコードプレーヤー、ラジオといったプロダクトデザイン、実現しなかった建築プロジェクト、エキシビションデザイン、オフィス空間のデザイン、テキスタイルデザインなど、パントンの活動や考えが包括的に紹介されている点も見応えがある。今見ても、斬新なデザインには違いないが、その奥に潜むパントンの考えは、現在でも多くのデザイナーに刺激を与えてくれるはずだ。

ヴェルナー・パントン展
会 期 12月27日(日)まで
会 場 東京オペラシティアートギャラリー(東京・初台)
入場料 一般1,000円、大学・高校生800円、中学・小学生600円
詳 細 http://www.operacity.jp/ag/exh111/