青山の人気レストラン「CICADA」にみる
『食』と『光』の 効能

2010年のミシュランガイドが発表になりました。また星の数がいろいろと話題になる「食」の世界ですが、皆さんもそれぞれのお気に入りのレストランがあると思います。

2003年にオープンして以来、予約困難にまでなった地中海料理のお店があります。その名は「CICADA」。このお店のシンボルにもなっているのが、本物のキャンドルである蝋のかたまりをくり貫いてランプシェードにした照明です。

かつて店内の照明について、インテリアデザイナーを交え、オーナーと打合せをしていたとき、「ホッとできて落ち着く空間」というテーマに対して、いろんなアイデアがあったなか、この照明を一からつくることにしたのです。

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ロウソクというのは照明以前にアナログなツールですが、視覚と気持ちに伝わる作用は、そのときの気分を変えてしまうくらい大きなものかもしれません。

ここでは地中海を囲む国々の料理がメイン。素材や調理法も本格的で味も抜群。予約困難であるのもしかり。外国人リピーターの多さにも現れているように、味覚が国境を越えたと言っていいかもしれません。そして皆時間を忘れ、あっという間に日付が変わっている……。フシギな空気がこのお店にはあります。

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お店を通して「あのロウソクを使った照明が欲しい」というリクエストを何度かいただいたことがありますが、いろんな条件があったりして、未だ同じものをつくったことはありません。

「ホッとできる落ち着く空間」と訪れた人たちが感じてくれているのであれば、それはきっとCICADAの「料理」と「空間」とお店のスタッフの「人」たちの三位一体感なのかもしれません。いつも居心地のいい空間をキープしてくれて、キャンドル照明のメンテナンスも怠っていません。

あきらかに私の中では三ツ星のレストランです。(文/マックスレイ 谷田宏江)

この連載コラム「tomosu」では、照明メーカー、マックスレイのデザイン・企画部門の皆さんに、光や灯りを通して、さまざまな話題を提供いただきます。