シカゴオートショー2010 文化としての国際自動車ショーを見た。

▲ジョンハンコックセンター94階から見たシカゴのゴージャスな夜景。街全体がまるで近代/現代建築の博物館である。左手は広大なミシガン湖。中央上に赤い光が2本あるのがシアーズタワー。

ユーザーを大切にするオートショー

シカゴはアメリカの中央に位置し、その地理特性から歴史的にコンベンションシティとしての顔をもっている。1893年、会期中2,750万人を集めた「シカゴ万博」はその後の建築・デザイン史上に重要な意味を残したが、シカゴは今も昔も情報の交流ポイントとして「人が集まる」魅力を都市につくりあげている。今回はそのシティパワーが文化・伝統へ浸透していることを「シカゴオートショー」を通じて紹介したい。

▲米国最大の総合コンベンションセンター「マコーミックプレイス」。圧倒的なスケールをもつ美しくモダンな建築。シカゴ・トリビューン紙の創業者ロバート・マコーミック氏の名前から命名されている。

毎年2月に開催されるシカゴオートショー。実は今年で102回を迎えた全米最大にして最古を誇る自動車ショーである。会場は東京ビッグサイト(日本最大)の約3倍もの広さをもつ、巨大コンベンションセンター「マコーミックプレイス」。都心からバスで約10分という絶好のロケーションで、空前の展示スケールと交通の利便性はコンベンションシティ・シカゴの大きな特徴だ。

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シカゴオートショーは1月のデトロイトショー終了から間髪入れずに開催されるが、その違いはデトロイトがメディアや業界へのPRに偏っているのに対し、シカゴはあくまでもユーザーコミュニケーションにこだわること。つまりコンセプトカーやワールドプレミアのみが主役ではなく、来場者が自由にクルマに触れてシートに座ることができる市販新車が展示の中心となっている。

▲会場内での「Jeep」の試乗会。サスペンションをはじめそれぞれの性能を体験できる。

試乗会をはじめ会場には来客者を楽しませる展示がいろいろある。右下の写真は珍しいUSアーミーによる展示とアトラクション。これは面白い。

▲クルマはもちろんだが会場には来客者を楽しませる工夫がいろいろある。右下の写真は珍しいUSアーミーによる車両展示とアトラクション。これは面白い。

ブランドあたりの展示台数も豊富で、チラ見しかできないようなショーと違いクルマファンにとって満足できる構成。会場には他のモーターショーによく見られる、視界をさえぎる2階建てブースがなく四方を見渡せて迷うこともない。またアトラクションも豊富で、例えば「Jeep」が荒れ地を回遊する試乗会を催すなど、その性能を存分に楽しませてくれる。
毎年、厳寒の時期に暖かい会場へ足を運び丸1日クルマを満喫する。この歳時記としての文化がシカゴオートショーには定着している。

▲ご存知、手作り限定生産の超高性能スポーツカー「LEXUS LFA」。CFRPというカーボンファイバー樹脂を自社開発し全面採用。大幅な軽量化はもちろん金属では不可能だった流麗なデザインを実現した。

▲左上: 全米注目のスポーツハイブリッド「HONDA CR-Z」。右上: EV「FORD Transit Connect Taxi」。左下: SUZUKIのコンセプトカーのエアフローなシートデザイン。右下: 世界で話題のラグジュアリースポーツEREV「FISKER KARMA」(米国)。

▲米国ならではのクルマとその世界に圧倒される。左上: 官能のスポーツカー「DODGE VIPER」。右上: ゴージャスなSUV「2010 LINCOLN MKT」。左下: サプライズなディスプレー「RAM 2500 Heavy Duty」 。右下: 成熟したトラック文化。FORD。

とはいえ、この場は巨大な米国市場に向けたグローバルブランドによる熾烈な戦場。各社とも先進のハイブリッド、プラグインなどのエコカーを前面に出しているが、米国ユーザーへの最新のプロダクトレンジは別な意味で興味深い。特に御三家、GM、フォード、クライスラー各グループによる圧倒的な展示量(日本ではなかなかお目にかかれない)。また日本、ヨーロッパ、韓国勢も米国現地法人が主体となり出展。ブランドや展示車も米国仕様なので、これも他国で見ることがない貴重なもの。このシカゴオートショーは、各社が実際のビジネスに向けて練り上げた独自のマーケティングとデザイン戦略のエッセンスを見ているのに等しいかも知れない。

▲左上: 鮮烈な「AUDI R8 SPYDER」。右上: 「SLS AMG」ガルウィングのスーパースポーツ。左下: 「ACURA ZDX」流行の4ドアスポーツクーペとSUVの新ジャンル。右下: ミドルサイズラグジュアリー「CADILLAC 2010 CTS SEDAN」。

▲ブリヂストンブースでデルタウイング・レーシングによる「インディカー・コンセプト」が発表された。環境への取り組みをモータースポーツにおいて実現していく、サスティナブルで革新的なレーシングカー。詳しくはAXISの6月号(5月発売)にて。

タキシードで鑑賞「ファーストルック」

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シカゴオートショーの名物行事として「ファーストルック・フォー・チャリティー」という一般公開日の前夜に行われるチャリティーイベントがある。会場全体にあふれんばかりのブラックタイとドレス姿が賑わうエクスクルーシブナイト。1名225ドルという高額なチケットではあるが、この収益はシカゴの18の慈善団体に寄付される。社交界とチャリティー、自動車産業、さらにエンターテイメントが多層に重なり合ったシカゴオートショーならではの文化といえよう。ヒト中心の姿勢を貫いているオートショー主催者に強いポリシーを感じる。

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セイフティー・スカラーシップ・コンテスト

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シカゴオートショーの際に受賞式が行われる、学生対象の「安全運転」をテーマとしたテレビCMコンテストがある。メディア先進国である米国らしい企画だ。シカゴオートショーに唯一タイヤメーカーとして出展しているブリヂストンアメリカスによる主催。受賞者には奨学金として5,000ドルが授与され、さらに実際のテレビCMとして9,500回以上を放映、6,100万人以上が視聴するビッグなコンテストである。昨年は800本以上の応募があり、オンラインでの投票数も12,000票以上にのぼった。学生のみずみずしい感性を育みながら安全への願いを託す社会貢献活動の好例である。

2009年度受賞の4名のコメントです。

1位 Eric Dachman 
Chose the very topical issue of texting while driving for his video, “Designated Texter.”

2位 Juliana Hinojosa
Felt compelled to enter the contest after her older brother, an Iraq war veteran, was killed by a drunk driver.

3位 Christopher Baugh
Created a humorous piece in the style of a hip-hop music video focusing on safety tips.

評論家賞 Zach King
His video “Sister Sonata” took an emotional look at how a fatal car accident impacts a sibling.

シカゴオートショーは2月21日(日)まで開催されています。
当レポートにご協力いただきました株式会社ブリヂストンおよびBridgestone Americas, Inc.に感謝いたします。
(写真・文: 田畑多嘉司)