蚕の研究にまで遡った西陣織、
「勝山健史 織物展」

AXIS誌137号(2009年2月刊行)の連載「匠のかたち」で紹介した、京都・西陣織の機屋の五代目、勝山健史の作品展が、3月17日(水)〜20日(土)まで、東京・代官山で開かれる。

▲展覧会のタイトルは「零」。「伝統、経験、積み上げてきたものをすべて捨ててみた。零に戻し、真っ白な気持ちで織物に向き合い、創り上げた作品」と記す。

西陣織とひとくちに言ってもさまざまな種類があるが、一般に金や銀など多色の糸を用いた豪華絢爛な絹織物というイメージがある。しかし、勝山織物の五代目、勝山健史が手がけるものは、西陣でありながら今の西陣とは異なる特徴がある。長い年月の間に効率を求めて簡略化されたり、分業に伴い変化していった部分を見つめ直し、古代裂(ぎれ)に負けないような絹織物をつくろうと、仲間たちとともに悪戦苦闘を続けているのだ。

▲長野の桑畑と、手づくりの座繰り機で繭から糸を引く。Photos by Yutaka Suzuki

その結果、勝山は蚕の研究にまで遡り、自ら桑畑を耕しつつ原種に近い蚕を育てている。さらに繭から生糸を引くのに座繰り機を用いたり、もちろんすべてが手機だったりと、考えるだけで気の遠くなるような地道な工程を実践しているのだ。昔の技法に戻ることだけがすべてとは思わないが、その結果つくられた西陣織は他とは光沢や肌触りが違って見える。

▲京都・西陣織の勝山織物の五代目、勝山健史氏。Photo by Yutaka Suzuki

今回の個展では、40〜50点の新作の反物、帯地を発表するという。「昔からこうゆうもんや、技法を変えたらつくれない」と日頃は一蹴されてしまうような事柄を見つめ直し、一から自分で考えてつくった西陣織。「零」というタイトルには、そういう勝山の決意が表れている。

勝山健史 織物展「零」

会期 3月17日(水)〜20日(土)
   10:00〜20:00(注:初日は12:00から、最終日は18:00まで)
会場 代官山ヒルサイドテラス E棟ロビー
   東京都渋谷区猿楽町29-8(地図)