柴田文江さんに聞く
trystramsのビジネスアクセサリーに込めた思い

▲カリキュレーターはフェルトケース付き(6,300円)とケースなし(4,200円)の2タイプ。カリキュレーターの色は同上のスカイブルーのほか、ブラック、カーキ、ホワイトの全4色。(*実際の製品は、写真と一部異なるところがあります)

コクヨS&Tが展開するブランド「trystrams(トライストラムス)」から新たなビジネスアクセサリーが発表された。そのデザインを手がけた柴田文江さんに話を聞いた。

▲ネームカードケースとペンケース(どちらも2,625円)。写真ではわからないけれど、スカイブルーのものは開くと中が濃紺のフェルト。そのほか、ピンク/グレー、ライトグレー/グリーン、ダークグレー/ベージュという組み合わせ。3月22日発売開始予定。

trystramsは「スマートワークスタイル」をコンセプトに、これまでのビジネスアクセサリーとはひと味違うコミュケーションツールを展開するブランド。今回、発表になったのは、フェルトケース付きのカリキュレーター、フェルト製のペンケースとネームカードケース、そして、キャリングケースの4アイテム。当初フェルトという素材から、女性ユーザー、もしくはクラフト的なものを連想してしまったが、そんな単純なストーリーではなかった。「ものは仕立て方によってプライベートにも、オフィシャルにもなる」と語る柴田。オン・オフがない働き方が増えているからこそ、プライベート感や愛着の感じられるプロダクトが持つ人の喜びにつながると考えたという。

▲カリキュレーターの薄さは約9mm。サイドが曲面のため、さらに薄く感じられる。また、持ち運びを考慮して液晶ディスプレイの部分がフラットなのも特徴。5月発売予定。

「カリキュレーターは大きいほうが断然使いやすい。それは自分が使っていてよくわかる」と柴田は言う。そのうえで外回りで使う人、個々のデスクを持たないフリーアドレスのときなど、ケースがあればさらに機能性が高まるという考えだ。しかし「カリキュレーターはケースのないものが多く、あっても限られている」。

そこで目を付けたのがフェルトだが、これを芯材と積層し、熱成型。内蔵したマグネットを留め具とすることで縫い目のないケースを実現している。そのとき、フェルトを成型する技術的なハードルは高かったようだ。柴田は「これはコクヨでなければできないこと。フェルトが工業製品になったと言えるのではないか」というと同時に、ボタンや鳩目のような留め具も考えたが、それでは工業製品ではなくクラフトになってしまうと選択しなかったと振り返る。

▲キャリングケース(4,725円)はブラック、グレー、ブラウンの3色。A4より一回り大きいサイズだ。3月22日発売予定。

キャリングケースも同様にフリーアドレスというオフィススタイルや、ちょっとした打ち合わせ時に有効なものとして考案された。従来品と大きく違うのは、バッグではなく、クリアケースを発展させたかたちであること。1つの角をマグネットで留め、片側には5つのポケット付き。伸縮性の高いナイロン素材のため、軽量なうえ、厚みのある小物もすんなり収納可能だ。大きなバッグの中でものがぐちゃぐちゃになっている自分にはピッタリかもしれない。

これらのビジネスアクセサリーは、テクノロジーによって進化するような商品ジャンルではなく、すでに成熟している分野。新製品の多くは、見映えやユーザー層を絞るといったことで新規性をもたらし差別化を図っているが、柴田は「機能性だけでなく、使うシーンを考え、持つ喜びにつながるようなもの」「新たなものの価値を標準化・均一化できるコクヨでなければできないこと」として考えたという。すでに成熟している商品ジャンルは、これらに限ったことではない。カリキュレーターに触れる手に変化はなくとも、働き方が変われば、人の行動も考え方も変わる。そのうえで持つ喜びにつながるもの、という柴田の言葉は、ものの溢れる世界におけるデザイナーの1つの拠り所のように思える。