ジェームズ ダイソン アワード 2010
「日本の若き才能への期待」

▲ジェームズ ダイソン アワード 2009 大賞の「Automist」。

現在作品募集中のジェームズ ダイソン アワード 2010ですが、今回、募集にあたって、ジェームズ・ダイソン氏よりコメントが届きました。

「日本は、私が最初に開発した掃除機 『Gフォース』を受け入れてくれた国です。他の国の掃除機メーカーは目先の利益にとらわれ、私のアイデアを受け入れてはくれませんでしたが、日本人は違いました。こうした経験から私は日本の“ものづくり”に対する姿勢を学ぶことができました。異なる意見に耳を傾け、新しいことに挑戦し、そして目の前の問題を解決する――。こうした取り組みこそが、ジェームズ ダイソン アワードという機会を通じて、私が日本の学生の皆さんに学んでほしいことなのです」(ジェームズ・ダイソン)。

AXIS誌での連載「ジェームズ・ダイソンの法則」でもしばしば語られているように、氏の“ものづくりの国・日本”への期待には並々ならぬものがあります。また、アワードのテーマである「日常での問題を解決するアイデア」こそ、日本人が得意としてきたものではないでしょうか。ぜひ日本の若きデザイナー(もちろん未来のデザイナーである学生も)の創意に富んだ作品を……そんな期待をこめつつ、ここでは昨年のファイナリストを何点かご紹介します。

上のイメージは昨年度大賞に選ばれた、RCAの学生、ユースフ・ムハンマドとポール・トーマスによる「Automist」。キッチン用の自動火災消火システムです。蛇口の下に噴霧装置が付いており、これはシンク下のポンプ&コントロールボックスに繋がっています。そして天井の火災探知機と連動していて、火災が発生するとワイヤレスでポンプを作動、噴霧装置が四方八方へと水を噴射するというもの。

「シンプルかつクレバーなデバイスで、40年近く変わってこなかった家庭用火災探知システムに革新をもたらす」とはダイソン氏のコメント。新しいシステムでありながら、従来のキッチンシステムに取り付けが簡単であるという点も高く評価されました。

次は最終審査に残った、デンマークのアールボーグ大学に在籍するアンドレア・オルセンによる「Wheel Step」。車椅子に車体を上下できるレバーシステムを取り付けたもの。

「車椅子に乗っていると、わずか一段の段差でも大きなハードルになってしまうことがあります。この提案はそうした日常の悩みを解決しました。たとえ、障害を持った人でも日々の動作をより簡単に行えること、これこそデザインが果たすことのできる大きな役割だと思います」(ダイソン氏)。

動作イメージはこのとおり。

続いて英国RCAでプロダクトデザインを学ぶミン キュー チョイによる「Folding Plug」。

「2009年の他の応募作品と同様に、このプラグは機能的でいて、かつ見事に問題を解決しており、実によく考えられた作品です。何の変哲もない、代わり映えしない英国式プラグであっても、独創的なエンジニアリングの発想をもってすれば改善策を生み出せる、ということを教えてくれました」(ダイソン氏)。

プラグに対するありそうでなかった提案ですが、次のムービーを見れば、機能を徹底的に追求した結果だということがよくわかります。

これら3点の作品を見てもわかるように、本アワードは決して最先端のテクノロジーを欲しているわけではありません。まず求められているのは「視点」、つまり日々の生活で流されることなく疑問に思うこと、何かおかしいと感じるマインド。そしてそれを解決するために突き詰めていく姿勢です。

ジェームズ・ダイソン・アワード2010概要は以下のとおり。

テーマ:日常での問題を解決するアイデア
募集期間:2010年2月2日(火)〜7月1日(木)
結果発表:2010年10月5日(火)予定
賞品:最優秀作品 1作品
●ジェームズ・ダイソン・アワード トロフィー
●受賞者に賞金約150万円(受賞時の為替相場に準じて変動)
●受賞者が在籍または卒業の教育機関に寄付金約150万円(同上)
●英国、またはマレーシアのダイソン研究施設訪問
国内最優秀賞 1作品
●英国またはマレーシアのダイソン研究施設訪問
応募資格:工業デザイン、プロダクトデザイン、エンジニアリングを専攻の学生、または卒業後4年以内の卒業生。

公式ホームページはこちら