アレクサンダー・ファン・スロッベの展覧会
「Fashion for thought」、および作品集『Alexander van Slobbe, and…and… and…』に注目

「Orson+Bodil」(1988〜) や「SO」(1993〜)などのブランドを手がけることで知られるファッションデザイナー、アレクサンダー・ファン・スロッベ。彼の作品集『Alexander van Slobbe, and…and… and…』がこのたび刊行されました。

この作品集は、5月16日までオランダ・ユトレヒトのセントラルミュージアムで開かれている「Fashion for thought」展にあわせて編集されたものです。展覧会同様、ファン・スロッベの過去20年の集大成ともいうべき充実した内容からは、ダッチ・ファッションにおける彼の功績がいかに大きいものかを実感させられます。

展覧会のほうは、過去の作品のアーカイブ、フォルムの持つ彫刻的な美しさに着目したコーナー、さらにそれを実生活の中で着用した様子を紹介するといった3つのセクションを核に構成されています。このほか、アーネム芸術アカデミーの教え子たちの優秀作品が並べられたり、服づくりを体験できるワークショップなど、ファッションを広くさまざまな人たちに楽しんでほしいと願う、ファン・スロッベの姿勢が隅々から伝わってくるかのようです。

従来の服の概念を覆し、なおかつ美しいものへと昇華させてきた作品の数々は、独特な世界観を携えた一種の芸術作品といえるかもしれません。

作品集では、ファン・スロッベがこれまで取り組んできたクラフトマンやアーティスト、フォトグラファー、建築家らとのコラボレーションの様子や作品なども収録。また、アートとファッションの関係性について記された彼のエッセイやインタビューなども読むことができ、展覧会とはまたひと味違った魅力的なコンテンツが収められています。

オランダを代表するデザイナーのひとりであるファン・スロッベですが、20年にわたる活動が詰まった304ページのボリュームからは、彼の資質ともいえる豊かなアイデアと卓越した美的センスを読み取ることができるでしょう。グラフィックデザイナーのメーフィス&ファン・ドゥールセンによる、ステッカー仕立ての写真で構成されている表紙は全9種類あり、それらが1枚1枚手で貼られていることも驚きです。コレクションアイテムとして9冊揃えるのも楽しいかもしれません。(文/阿部さやか)

「Fashion for thought」展
日時:2月13日(土)~5月16日(日)
場所:セントラルミュージアム(オランダ・ユトレヒト)

『Alexander Van Slobbe: And… And… And…』
304 ページ サイズ 21,7 x 30 cm,
言語:英語
45ユーロ
ISBN 978-90-78088-31-8