スパイラルガーデンにて林 雅之写真展
「Building Building」がスタート

本誌の撮影でもたびたびお世話になっている写真家、林 雅之さんの展覧会が、4月16日(金)から青山のスパイラルガーデンで開催されます。1月末に渋谷のギャラリー・ルデコで開かれたマネキンを被写体とした写真展が記憶に新しいところですが、今年2度目の個展では、鉄筋の支柱や作業用の足場パイプなどが剥き出しとなった都内の建設現場を、約40点の大型モノクロプリント作品によって紹介します。

写真が写し出すのは、建物が完成した暁にはデザインという名の外皮に覆われ決して露になることのない基礎、杭、梁や耐力壁といった建築を支える骨組みです。力学的合理性によって組み立てられたそれらの姿や空間構成を、林さんは「建築のもう1つの本質」と語ります。

▲Photos by Masayuki Hayashi 展覧会の開催に合わせて同名タイトルの写真も刊行されます。

日々刻々と様変わりしていく建設の現場にあって、新たな空間を支えるために立ち現れた建材類の圧倒的な質量と、合理という名のもとに無駄を徹底的に排した機能美とが交錯する時間は決して長くはありません。「日数にしてわずか数日」(林さん)。展覧会の会場に掲げられるのは、その瞬間を余さず捉えた写真の数々です。

展覧会の準備に忙しい林さんの事務所を訪ね、いくつかの写真を見せていただきました。それは、普段目にすることの多い竣工写真や、定点観測的に撮られたプロセス写真とは明らかに異なる質感を伴った写真です。縦横無尽に張り巡らされた鉄骨や補強パイプが実に艶かしく、建築という存在に対して新たな息吹を注ぎ込む血管の巡る様を見ているようでもあります。

多くの人たちの手によって構築されたその風状は、「建物の完成後には決して見られない、建築の中にある紛れもない本質」を、見る者に強烈に印象づけるはずです。脳裏に刻まされたその本質を知ることで、場合によっては建築の存在をより身近に感じることができるかもしれません。

建築を見るという行為が、設計者の意図する完成した姿にのみ向けられることの多いなか、そこに至るまでの骨格の形成にも、人を惹き付けて止まないダイナミックな光景、あるいは声高に叫ばれることのない機能美といった魅力が溢れていることを、この展覧会は教えてくれるます。それは紛れもなく、「建築のもう1つの本質」を携えた魅力となることでしょう。

▲写真家の林 雅之さん。本誌143号にて、「日本リュージュチームの新型そり」や「ロードゥ イッセイ エディション エットレ ソットサス」の記事の撮影を手がけていただきました。

会場で林さんを見かけることがあれば、是非とも一声かけることをお薦めします。ここで紹介すること以上の意図を、きっと丁寧に説明してくれることでしょう。

「Building Building Masayuki Hayashi EXHIBITION」

会期:2010年4月16日(金)~25日(日) 11:00~20:00
会場SPIRAL 1F スパイラルガーデン (港区南青山5-6-23)
入場料:無料
問い合わせ先:Tel. 03-5786-2502(ASOBOT/嘉村由美)
林 雅之プロフィール:東海大学教養学部中退後に写真をはじめ、『VOGUE NIPPON』『Casa BRUTUS』のエディトリアルや、「コム・デ・ギャルソン」「アルフレックス」「飛騨産業」「無印良品」の家具やプロダクトの撮影、ポラロイドギャラリー、Gallery Koyanagi、佐賀町エキジビットスペースなどでの作品発表などを行う。プロダクトデザイナーからの信頼も厚く、なかでもnendoとの協業は良く知られている。その関係を紹介した記事は、本誌126号をご覧ください。