オルセー美術館展2010 「ポスト印象派」展
改装工事の最中、貴重なコレクションが日本へ

▲オルセー美術館館長の、ギ・コジュヴァル氏。今回の改装を「革命ではないけれども、必要な改修」と語ります。

パリを訪れる日本人観光客のあいだでもっとも人気の高いスポットといわれるオルセー美術館セーヌ川の河畔に建つ印象派、あるいはポスト印象派の殿堂は現在、館内の半分にあたるスペースの改修工事に入っています。

▲これは駅舎から美術館へ、当時の改装工事の様子を写した写真です。

現在のオルセー美術館は、1900年のパリ万博開催に合わせてホテル機能を備えた駅舎として建設されたものです。一時は「パリでいちばん醜い建物」と市民から酷評され、取り壊しなどの噂も囁かれたようですが、1986年にイタリア人建築家のガエ・アウレンティの手によって美術館へと生まれ変わると評価は一転。壁にはめ込まれた大時計や自然光の差し込むアーチ型のガラス張り天井、縦長のプラットホームなど駅舎の面影を色濃く残した空間は、世界中の人々を惹き付けて止みません。

▲1961年にオルセー駅跡地の再開発コンペが実施されます。コルビュジエなども参加したコンペにおいて提出されたホテル計画案の1つがこれ。できていたら、セーヌの風景はかなり変貌していたでしょう。

ただし、個々の展示室を見ていくと、例えば印象派の作品が並ぶ上階などでは、柱や梁などによって視界が遮られたり、空間全体を見渡すことが難しいなど、機能を転用したことによる悪影響が少なからず出ている印象を受けます。これは、館長のギ・コジュヴァル氏も認めるところであり、初めて行われる今回の大規模改修ではこうした部分の改善が主となるようです。

▲カンパナ兄弟が手がけるカフェのデザインイメージ。かなり印象が変わる気がします。

改装工事は2011年の9月まで行われ、パリの街並を俯瞰できることで人気の高い大時計裏のカフェも、カンパナ兄弟のデザインによって生まれ変わります。リニューアル後のオルセー美術館は、コレクションや作品に接するうえでこれまで以上に優れた環境が用意されることでしょう。

改装工事によるメリットはそれだけではありません。工事を機に閉鎖されている展示コレクションの一部が、この期間に世界中を巡回。モネやセザンヌ、ルソーやナビ派の傑作とうたわれる115点が、オルセー美術館展2010 「ポスト印象派」展として日本にやってきます。

展示作品の約半分が日本で初めて披露されるものだというコレクションに対し、「これらの絵画がまとめてフランスを離れることは2度とない」とサルコジ大統領は語っていますが、出展作品目録を見ると、この表現が決してオーバーでないことがわかります。行列必死の展覧会になりそうですが、開催期間が一時重なるルーシー・リー展(4月28日〜6月21日まで)と合わせて、楽しみたいものです。

オルセー美術館展2010「ポスト印象派」
会期:2010年5月26日(水)~8月16日(月)
開館時間:午前10時~午後6時、金曜日は午後8時まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週火曜日
会場国立新美術館企画展示室2E(東京都港区六本木7-22-2)