国立民族学博物館に、
「ことばスタンプ」という言語展示作品が登場しました。

2010年3月にリニューアルオープンした大阪・吹田市の国立民族学博物館 言語展示場。展示作品の1つである「ことばスタンプ」の企画・開発・製作を担当したのはGKテックです。企画の意図や開発プロセスなどについて、プロジェクトに関わったGKテック インタラクティブシステム開発部の下村 萌さんに解説いただきました。

▲「ことばスタンプ」は、スタンプ状のブロックを使って言葉と音の関係を体験的に知ることのできる子供も大人も楽しめる展示。音のスタンプ(36種類)をテーブルに押し付けると、組み合わせや押した順序によってさまざまな音が発せられます。

音からひらがな

「ことばスタンプ」は、手にした1つ1つのスタンプから音が出るようになっています。スタンプは凸と凹をはめ合わせて2個が1つのひらがなとなり、日本語に限らず、いろいろな音がつくれます。実は、普段はほとんど気にすることはないかもしれませんが、ひらがなは「s」や「z」のように音の断片から成り立っています。日本語では1文字のひらがなと思っている「か」なども、分解すると実は「k」と「a」という2つの音の組み合せなのです。

繰り返し2文字の言葉

ことばスタンプでは2文字の言葉を自動的に繰り返して、日本語の擬態語・擬音語に多い、連続した2文字の言葉をつくれるようにしました。その意味や使い方、イラストも見ることができます。例えば、「さ」と「ら」のスタンプを押すと「さら」になり、さらに「さらさら」へと表示が変化していきます。同じ音からできた言葉も、それぞれの段階ごとにイメージが刻々と変化していくことに気づけます。

“スタンプ×音”で遊ぶ

気軽に試せるのもスタンプならではの楽しみ方ではないでしょうか。試しにいろんなパターンを組み合わせてみる。組み合わせを試しているうちに、しだいに音という形のないものに触れているような感覚を得られるところが展示のミソです。何気なくスタンプを手に取って押してみた、音が出た、じゃあ今度はこれとこれを組み合わせたらどんな音になるんだろう。木がどんどん枝を広げて成長していくように、次々と新しい発想が膨らみます。

こだわりの開発プロセス

そんなインタラクティブな展示の開発は、プロトタイプを、つくる、使う、改良するというサイクルを高速で繰り返し、練り上げていくことが重要です。特に力を注いだのは、スタンプを押す楽しさと、音を聞く体験が違和感なくスムーズに合わさっていること。スタンプを押した瞬間の“むぎゅっ”という感触に、どのような素材を当てるかを検討したり、手に馴染む持ち手の形状、インクがじんわりと染み込むような文字の定着の仕方、言葉の意味に合わせた文字の動きなどのコンテンツ演出、音の長さとスタンプを押す長さの合わせ、36種類の固有マーカーの開発、認識システムの改良など、「あぁ、これだ!」というレベルの気持ちよさに高めるための細かな調整に最後の最後までこだわりました。


ほんのわずかなずれも人の感覚は実に細かく見抜いてしまいます。茶筒の蓋を閉めるようにぴたっ!とくる瞬間まで、スタッフが総力をあげて粘り強く開発しました。常設展示ですので、いつでも気軽に体験できます。ひとりでも多くの人にことばスタンプを体験してもらえると嬉しいです。最後に、この展示の企画制作にあたっては、国立民族学博物館の菊澤律子准教授にさまざまな助言をいただいたことを付け加えさせていただきます。

▲「ことばスタンプ」の開発に携わったGKテック インタラクティブシステム開発部の下村 萌さん。

国立民族学博物館
住所:大阪府吹田市千里万博公園10-1
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:水曜日(水曜日が祝日の場合は、翌日が休館)、年末年始(12月28日から1月4日まで)
観覧料:一般420円、高校・大学生250円、小・中学生110円(20名以上の団体割引あり)
Tel:06-6876-2151