デザイナーのための塩ビの教科書
第2回「塩ビを知る—素材特性について」

今回は塩ビの特性について、さまざまな使用例を通してご紹介していきます。

塩ビとは何か?

塩ビとは「塩化ビニル樹脂」又は「ポリ塩化ビニル」を意味します。一般的に略して「塩ビ」と言われています。
「塩ビ製品」とは塩化ビニル樹脂を主原料として製造された各種製品の総称で可塑剤を含んだ軟らかい製品「軟質塩ビ製品」と可塑剤を含まない硬い製品「硬質塩ビ製品」に大別されます。柔らかいフィルム、シート、電線被覆材、ホース、チューブ、自動車内外装部材などから硬い配管、平板、波板、雨樋まで様々の製品に加工され、使用されています。塩化ビニル樹脂は、私たちが日頃、使用する四大汎用プラスチック(熱可塑性プラスチック)の一つです。他の汎用プラスチックはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンです。

軟質塩ビ製品は塩ビ薄膜単体の塩ビフィルムや塩ビフィルムに生地を貼り合せた塩ビレザー、塩ビフィルムに裏表に生地をサンドイッチさせたターポリンなどの単体又は複合のフィルムやシートを組み合わせ加工し、各種軟質塩ビ製品を作ります。
また、塩化ビニル樹脂は柔らかくする成分(可塑剤)を加え、加工することにより硬い製品から軟らかい製品まで様々な製品を製造することができます。
硬質製品には水道管、配管、継ぎ手、塩ビ平板、看板、ダクト、波板、雨樋、硬質シート、サッシ、サイディング、塩ビ鋼板、住宅用廻り縁などがあります。

多種多様な使用事例

また可塑剤を加えた軟質製品には塩ビフィルム単体及び布、繊維、紙、等の生地と貼り合わせたものを含め、下記のような身の回り、家の中、生活用品などの多くの製品があります。
・文具用、袋用、鞄用、衣料用、玩具用、車両用、工業用塩ビフィルム、壁紙、化粧フィルム、床シート、クッションフロア、タイルカーペット、床タイル等
・ターポリン、帆布、フレコンバッグ、膜シート、幌シート、養生シート等
・家具、ソファ、椅子、カーシート、間仕切り、合羽、鞄袋、バック、テーブルクロス等
・ラップ、農業用フィルム、マーキングフィルム、ホース、チューブ、手袋、サンダル、防水シート、プール、玩具、保育用品、電線コード、ケーブル、錠剤包装等

塩化ビニル樹脂は、熱、光の影響で分解し易く、そのままでは成形加工時の熱処理に耐えることができず、分子中の塩素、水素が脱離して塩化水素が発生します。
安定剤はこの塩化ビニル樹脂の分解、塩化水素の脱離を防ぐ為に必ず添加する物質です。安定剤には主に金属有機酸化合物(カルシウム系、亜鉛系、バリウム系、複合等)が使用されています。
塩ビ樹脂は製品として使用されている段階でもわずかですが光(紫外線)や酸素により分解が進行します。この劣化を防ぐために、紫外線吸収剤や酸化防止剤が安定剤とともに使用されています。

 塩ビ樹脂は溶融粘度が比較的大きく加工温度が分解温度に近いため、大型の射出成型には不向きですが、溶融状態での粘弾性挙動の温度に対する依存性が比較的小さく安定しているため、成型条件の幅が広くて複雑な断面形状の異型押出成形加工や大規模なカレンダー成形加工が可能です。また、非結晶性なので結晶が出来ることによる収縮が小さく、寸法精度の良い成型品が得られる特長があります。
 塩ビ樹脂は極性基を持ち非結晶性のため、さまざまな物質との混和性が良く、使用時の要求物性を可塑剤やさまざまな添加剤、改質剤との配合によって自由に調整することが出来ます。

軟質塩ビフィルムは印刷性に優れており、デザインに合わせて繊細な表現が可能で印刷方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷などがあります。最も多く用いられているのはグラビア印刷です。

塩ビに関するお問い合わせは日本ビニル工業会まで。ホームページはこちら。塩ビものづくりコンテスト2012の詳細も決定次第こちらで発表となります。