デザイナーのための塩ビの教科書
「塩ビものづくコンテスト 2011より」

昨年第1回が開催された「塩ビものづくりコンテスト PVC Innovation Design Contest」今年もこの4月から第2回の作品募集が開始される予定である。この連載では、第2回を前に改めて、塩ビという素材についてレポートしていく。まずは第1回を振り返る。

第1回は「新たに切り拓く、PVCの可能性」というテーマの下、PVC(ポリ塩化ビニル)の素材特性を生かした作品が募集された。審査基準は以下のとおり;
テーマとの整合性
独創性:新規性や創造的な発想・表現がされているものか。
素材性:PVCの素材特性が活かされているものか。
実用性:実用的であり、市場のニーズや商品化の可能性があるものか。
環境性:環境配慮やリサイクルなど持続性があるものか。

応募点数は331。惜しくも大賞は該当者なしとなったものの、準大賞には2作品が選出された。

準大賞「優雨」(名倉奈央子)

準大賞に選ばれた名倉奈央子さんの「優雨」は、和紙を塩ビコーティングすることで強度を持たせた雨傘。繊細な和紙を雨傘に使うというアイデアとともに、和紙以外との組み合わせや日傘にも展開することで従来の傘とは異なる期待が持てる点が高い評価を受けた。

準大賞「サクラ」(長谷川茉実)

同じく準大賞の長谷川茉実さんの「サクラ」は、軟質塩ビの1枚のシートをさまざまに折り曲げることで、断面に多様な光と曲線が生まれるというもの。小物置きにもなり、複数を重ね合わせることで、さらに不思議な光を放つオブジェにもなる。軟質塩ビが持つ柔軟性をとらえて、単純な加工で1枚のシートに魅力的な造形を与えた点が高く評価された。

その他入選作品には、実際に東日本大震災でも使用された簡易式雨水貯水浄水タンク「東プラ Aqua Life 200」や、軟質塩化ビニルのシート1枚に取手をつけるだけという「PVCポーチ」、パッケージが野菜の形をした培養土「トマトにとまと」、軟質塩ビの特性を生かし透かせる・重ねるなどの楽しみ方ができる「えんびちょう」など、多様な顔ぶれが並んだ。入選全作品についてはこちら

大賞なしの理由は、塩ビという素材の“あまりの変幻自在さ”ゆえでもあり、それがまだ十分に理解されていなかったからかもしれない。柔らかさが自由に調整できる、透明感がある、発色がよい、耐久性・リサイクル性・加工性に優れるなど、塩ビの素材特性をより理解することで、創造的な提案ができるはず。次回以降は、塩ビという素材について詳しくレポートしていく。

昨年12月に東京ビッグサイトで開催された「エコプロダクツ 2011展」では、コンテストの主催団体でもある塩ビ工業・環境協会(VEC)と塩化ビニル環境対策協議会(JPEC)が、、「塩ビの新たな可能性を求めて」をテーマにブースを出展。第1回の入選作品も展示された。

塩ビについての問い合わせは塩ビ工業・環境協会(VEC)まで。第2回の募集要項についても決まり次第、同協会のサイトで発表される予定。