「塩ビ工業・環境協会 一色 実氏 インタビュー」

現在作品募集中の「塩ビものづくりコンテスト PVC Design Award 2012」今回は、同アワードの主催団体の1つである塩ビ工業・環境協会の一色 実氏にインタビュー。同アワードにかける想いについてお話をうかがった。

ーー1回目はPVC業界としても手探りで進めてきたとおっしゃっていました。

当初は日本のデザイン力を取り入れることで、PVCの新たな価値をつくっていきたいという想いで始めましたが、全く初めての体験でしたし、どれが正解かもわかりませんでした。しかし、1回目が終わって、展覧会などもやっていくなかで、これからの方向性が若干でも見えてきたと思います。
 具体的には、デザイナー(応募者)の方にPVCという素材をできるだけ深く理解していただいて、その特性を引き出すような提案をしていただく。同時にPVC業界の人間がそれを見て、ビジネスにするためにはどうしたらいいかという意見を出しながら、やり取りをしていく。どうやってつくるか、どうやって売るかということを考えるなかから、応募者にとっても、業界にとっても次の道が開けていく。それがこのアワードの目的ですね。

ーーそういう意味では、一次審査を通過した作品のプロトタイプをつくるというやり方は意味がありますね。

やはり絵だけの提案では、わからないことが多い。絵だけを見て「こんなのはつくれない」と言うのは簡単です。しかし、加工業者が四苦八苦しならがらつくっていくことに意味があると思います。従来の常識的なつくり方では難しいけれど、装置も含めて見直していくことで、1つのブレークスルーが生まれるはずです。
 だから単に応募者のためにプロトタイプをつくるのではなく、つくる側にもPVCに対する考え方や加工の仕方を見直してもらう。アワードはそういう機会になればと思っています。

ーー前回ご紹介した黒河内真衣子さんのバッグやアクセサリー(上の写真)なども従来では考えられないものだったのではないですか。

黒河内さんのやり方というのは、PVCの加工業界にすると常識外です。穴を空けて、そこにPVCを通していくとか、まるで編むような感じ。もうちょっと透明性が欲しいといった場合でも、われわれが思うような濁った感じではなくて、もっとクリアな透明がいいとか、技術力のある日本のメーカーでも難しいオーダーでした。
 ただ、黒河内さんにはこういうバッグをつくりたいという明確なイメージがあったので、われわれもそこに向かって協力ができたんですよね。結果として、数万円でも売れるような作品に仕上がりました。われわれとしてもデザインによって、ここまでの価値が生まれるのかと認識を新たにしたのです。

ーー昨年の準大賞の「サクラ」はビジネスとしていくつか引き合いがあると聞きました。

インドのスーパーニードルというブランドにデパートのディスプレイとして使っていただきました(上の写真)。その他にもいろんな催しのノベルティとして名前を入れて使いたいという話が数多くあります。同じく準大賞の「優傘」もテレビで紹介されたりして、商品化への検討を行っています。
 アワードというのは、やりっぱなしではだめで、できる限りビジネスに乗せて次につなげていかなければ意味がありません。アワードが良循環にスパイラルアップするための1つの基軸は、提案をいかにビジネスに仕上げていくか。そういうつもりでわれわれ主催者は取り組んでいます。

ーー今回のテーマは『社会に求められる「○○×Soft PVC」です。

Soft PVC(軟質塩ビ)はその柔軟な特性から、われわれの生活のさまざまなところで使われている多様性溢れる素材です。ただ、既存のものの焼き直しではなくて、新しいものをつくり上げるには、今後人や社会の中で求められるものは何かを考えていく必要があると思います。そうした考察のなかから、アイデア溢れる、また、どうやってつくろうかとわれわれが頭を悩ますような作品が集まることを期待しています。

「PVC Design Award 2012」

テーマ:社会に求められる「○○ × Soft PVC」

作品提出期間:2012年4月20日(土)〜8月20日(火)必着

賞:大賞1点 50万円/優秀賞3点 各10万円/特別賞5点 各5万円/入賞10点 各2万円

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PVCについての問い合わせは塩ビ工業・環境協会(VEC)まで。

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