「PVCを知る—その素材特性について」

今年もこの4月から第2回の作品募集が開始される予定の「塩ビものづくりコンテスト PVC Design Award」。今回はPVCの特性についてレポートする。PVCとはPolyvinyl chlorideの略で塩化ビニル樹脂、つまり塩ビのこと。PVCはプラスチックの一種だが、かたくてつるつるしたプラスチックのイメージとは大きく異なり、ものづくりの素材として多様で面白い性質を持っている。

1)硬いものから柔らかいものまで、多様な成型が可能
PVCには、可塑剤という柔軟剤を自由に混入できる性質がある。つまり、その混入の有無と程度によって、水道管や窓サッシのような硬いものから、ラップフィルムやビニル傘、シャワーカーテンのような柔らかいものまで、いろいろなものをつくることができる。

2) 印刷性・接着性、色の調整など、加工性に優れる
PVCはビニールレザーの素材でもあり、特別な表面処理をしなくても印刷ができ、接着も可能。質感を出すため表面に凸凹をつくるのも容易である。

下の写真は、AXIS155号の連載「産学共同の正しいやり方」でも紹介している、上田安子服飾専門学校と塩ビ工業・環境協会によるプロジェクト。学生たちがPVCを使ったバインダーノートをデザイン。レザー調や布地調といった多様なテクスチャー表現などを試みた。色や堅さ、厚みを自由に調整でき、印刷性にも優れるというPVCの特長を大いに生かした好例である。

3)透明度の調整も可能で、集光性がある
第1回準大賞の長谷川茉実さんの「サクラ」にも見られるように、色とともに透明度の調整も可能で、かつ集光性があるため、周囲の環境を巻き込んでの多彩な表現が可能となる。

4)屋内外で活躍する耐候性
PVCにはさまざまな添加剤を混入することが可能。その添加剤を使い分けることで、農業用ビニルフィルムや塩ビサッシのような耐候性に優れた製品をつくることができる。

5)安全を提供する難燃性
PVCは化学構造の中にで塩素を含んでいるため難燃性があり、熱源がなくなると自然に火が消えるという自己消火性もあるため、壁紙をはじめ、建築物の外壁など多くの建材に使用されている。

その他、医療用器具をはじめ、家庭用プール、浮き輪、ボート、ホースなど、われわれの周囲にはPVCを素材としたものが数多く存在する。PVCの特長を生かした新たなデザイン提案をできないか。それがこのアワードの目的である。

PVCについての問い合わせは塩ビ工業・環境協会(VEC)まで。第2回の募集要項についても詳細決まり次第、同協会のサイトで発表される予定。