みなさんこんにちは、FabLab Japan/FabLab Reaserch門田ロボテクの門田和雄です。門田ロボテクとは、東京工業大学附属科学技術高等学校の機械システム分野の教員である私が生徒たちとともにロボット研究などに取り組む集まりの総称です。拠点が学内にあって、FabLabの理念である市民工房という形態はとりにくいため、FabLabの研究施設であるFabLab Reaserchという位置づけになっています。
FabLabのものづくりはその施設ごとに特色があります。単純な分類はできませんが、建築系、デザイン系、電気電子系、機械系など、力点の置き方がそれぞれ異なります。門田ロボテクの活動は機械系に相当しますが、ロボット研究に重点を置いているため、ロボット系や制御系ということもできます。機械系の施設の特長として、金属加工のための各種工作機械を設置していることが挙げられます。切削加工や塑性加工をはきちんとした安全教育を受けていないと、大怪我をすることもあるため、市民の誰もが利用するというわけにはいきません。今後も機械加工系のFabLabが学校外に独立して存在することはなかなか難しいと思います。
FabLabメンバーの青木君が先日FabLabガーナを訪問しましたが、そこもベースは公立の工業高校とのことでした。日本の工業高校は昭和40年代に数多く設立されましたが、その後の普通科志向や産業空洞化の進行などにより、現在はその数を大きく減らしており、存在意義を見出せすのが難しい状況です。しかし、工作機械をはじめ設備は充実しており、高度なものづくりをできる環境が整っています。一般の方々には金属の切削加工や溶接などを見学したり取り組む機会がないため、日本でもこれらを広く市民に開放していく動きが出てくると面白いと思っています。
門田ロボテクではこれまでにFabLabの仲間を集めて見学会や講習会を開催してきました。最近ようやくレーザー加工機や3次元CADを導入。FabLabのキーワードでもあるデジタルファブリケーションの導入が遅れていましたが、これらの使い方にについては、先に導入しているFabLab施設と情報交換をしながらやっていきたいと考えています。近々、3Dプリンタも導入予定です。
それでは、ここ1年ほどの間に私が取り組んできた活動をいくつか紹介します。2011年8月、FabLab発祥の地であるマサチューセッツ工科大学(MIT)を訪問。メディアラボのMIT’s Center for Bits and Atomsを見学しました。ここでは講習を受けた学生たちが比較的自由に工作機械を活用してさまざまなものづくりに取り組んでおり、基本的なものづくりを行うことができるさまざまな工作機械が設置されていました。その充実度を見て感銘を受けるとともに、一方で標準的な工業高校機械科の実習工場とそれほど大きくは変わらないという印象も受けました。これは、機械系のFabLabを立ち上げる場合に大いに参考になることだと思います。
2011年12月3日~4日、東京工業大学・大岡山キャンパスで「Make:Tokyo Meeting07」が開催されました。Make:Tokyo Meetingは、エレクトロニクス、アート、DIY、クラフト、サイエンスなど、ジャンルを超えて、自由な発想でテクノロジーを使いこなすMakerが多数出展。展示、ワークショップ、ライブパフォーマンス、プレゼンテーションなどを通じて、モノをつくることの楽しさ、そして自らの作品に関する情報をシェアするためのイベントです。このイベントには以前から注目しており、FabLabJapanを知ったのも、前年に開催されたMake:Tokyo Meeting05においてでした。
親大学が会場なのでぜひ参加しようと、Make:TokyoMeeting07には門田ロボテクからロボットとねじの展示実演を行いました。展示したのは、3年生が課題研究で取り組んだ「三輪走行と二足歩行の変形が可能なロボット」と「マスタースレーブ方式によるロボットアーム」。また2年生が授業で取り組んだテオ・ヤンセン機構の模型も展示しました。
去る7月14日~16日にナカダイ前橋支店で開催された第2回産廃サミットでは、空気圧制御と分解のワークショップを担当しました。テーマは「こわしてまなぼう」。下記がその紹介文です。「ものづくりに欠かせない機械要素であるねじにはさまざまな種類があり、これを適材適所で使い分けることで、ものづくりの幅が広がります。本ワークショップではナカダイに持ち込まれたさまざまな製品を分解しながら、ねじの種類や用途について学べます。たかがねじ、されどねじ。ねじの奥深さを体験してみませんか」。
さらに、「挑戦してみよう、空気圧シリンダの制御」として、次のような内容のワークショップを行いました。「空気圧シリンダは、コンパクトで強力な往復運動を取り出すことができるアクチュエータです。工業的には自動機械の内部に幅広く用いられていますが、個人のものづくりではあまり用いられていません。本ワークショップではナカダイに持ち込まれた機械を分解して取り出した空気圧機器を用いて、実際に空気圧シリンダの制御を行います。複数の空気圧シリンダをシーケンサのプログラムで順番に動かすことで、さまざまものを動かすことができるようになります」。
以上、今後も門田ロボテクの運営を通して、機械系FabLabの可能性を探っていきたいと考えています。なお、世界的規模で拡大しているFabLabにはその運営関係者が集まるの国際的な年次大会があり、8回目の今年の「FAB8」は8月22日~28日にニュージーランドのウエリントンで開催されます。私は初参加ですが、世界各国のFabLab関係者と交流してきたいと思っています。(文/門田和雄、FabLab Japan)
門田ロボテクのホームページは こちら。
この連載はFabLab Japanのメンバーの皆さんに、リレー方式で、FabLabとその周辺の話題についてレポートしていただきます。