廃材から得られる「学び」
若者たちが素材と向き合う

私たちの工場がある前橋でも連日30度を超す猛暑。現場の温度計の針は40度を超えて振り切って、「危険!! 熱中症になります。外に出ないようにしましょう」という表示を指し続けています。そんななか、去年に引き続き、今年もやってきたのはドリフターズサマースクールの面々。今年は、大型バス1台で60名ほどが来社しました。ダンスとファッションと建築、広報が一体となって、短期間でお金の取れるレベルの商品、作品を仕上げていくというプロ仕様のサマースクールです。やはり、自らお金を出して参加している若手の目はギラギラしてます。私の説明を聞く目つきも真剣で、メモして、録画してと、一言一句聞き洩らさないようにしています。

そして、工場内を徘徊しながらハンティング。廃棄物が運ばれてきてリサイクルされるまでの流れや、モノの履歴を聞いて、自分なりに解釈している様子が見て取れます。彼らの発表は9月末。素材を生かすことはもちろんですが、時代の背景やモノの履歴をいかにプラスしてアウトプットするのか、ひじょうに楽しみです。

で、何を使って何ができるの? 最後はどういうものが見られるの? よくわからないですよね。これこそがこのサマースクールの醍醐味だと解釈しています。お題と材料、最終形を提示されたワークショップ(仕事)はたくさんあります。逆に言うと、それが今までのワークショップであり、教育であり、日本を支えた製造業だった気がします。素材やそれぞれの感性を基礎として、現状からの出発。“考える”と“学びとる”を強烈に意識することで成り立つ世界です。つまり、誰も教えてくれない世界での戦いです。これは“教育”ではないのです。

さて、話題が変わって、東京理科大学の大学院建築設計の講義です。趣旨は、「廃棄物を素材と捉え、その属性を最大限に活かしたデザインの提案」です。私たちの周りには、さまざまな素材があります。それらはすべて地球から産み出されたものです。20世紀になってつくられた素材の種類は、前世紀の数百倍。現在では5〜7万種類の素材があると言われています。人類の素材に対する飽くなき欲望は、歴史そのものを突き動かしてきたと言っても過言ではありません。

この講義、第1段階は、素材の世界を知るためのリサーチを、金属系/合成樹脂系/セラミックス系/複合材料系/その他の5グループに別れて行いました。第2段階はリサイクル工場の見学。工場内にあるさまざまな素材のなかから、各自テーマとする素材を選び、購入し、持ち帰ります。次いで、その素材の属性を多面的に探ります。第3段階では、各自その素材の属性を活かしたデザインの可能性を探ります。

私と教授で建築家のヨコミゾマコトさんで趣旨や方向性を話しました。「リ・マテリアルとは、(造語ですが)その素材の最期を遅らせることを言います。素材の素材としての終わり方、終わらせ方をよく考えてください。そして、素材を延命させる、つまり時間までも取り込んだデザインを提案してください。ただし、アクセサリーやステーショナリーなどといった小物類ではなく、建築的スケール、または身体や環境と関わる機能を持つデザインを求めます」。

学生は、工場を見学して、感じたことを表現しました。驚くほどしっかりしたプレゼンでした。しかも、建築の学生らしく、大きかったです。アートでもなく、プロダクトではなく、構造計算をした立体物でした。

もう1つ別の話題。千葉工業大学の山崎研究室が、ナカダイの素材を使ってさまざまなシーンにチャレンジしています。先日行われた産廃サミットではカフェスペースをつくりました。その他、マテリアルを気軽に手に取ってつくることができる“キット”の制作と販売から、マテリアルライブラリーを研究室内に設置して、それらの特性を調べて、アーカイブしていく……などなど、チャレンジの幅は広いです。

その分、焦点が絞れず苦労しているようです。が、1度の打ち合わせに、最低でも10人は集まるという団結力と最後までやりきる気合いには頭が下がります。9月16日にはオープンラボを千葉工業大学の津田沼校舎で行い、彼らの取り組みを皆さんに披露します。ご興味のある方は、ぜひ、見に来てください。

このまとまりのない文章、わざとではないです。つまり、結論はないんです。素材をどうするか? どう取り組むか? 答えを自ら見つけなければならないということです。ナカダイの素材の新しい使い方です。後期もいくつかの大学の授業の一環で、30人以上の規模での見学予定があります。同時に、子供向けのワークショップも開催します。素材と向き合うことで新しいコミュニケーションが生まれてきています。自分で発想することで少しずつ広がってきています。(文/中台澄之)

この連載は株式会社ナカダイ前橋支店支店長・中台澄之さんに産業廃棄物に関するさまざまな話題を提供していただきます。