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橋本夕紀夫 著『LEDと曲げわっぱ 進化する伝統デザイン』


『LEDと曲げわっぱ 進化する伝統デザイン』

橋本夕紀夫 著(六耀社 2,625円)

インテリアデザイナーの橋本夕紀夫による本書は、自身の作品集ではなく、目次の通りに日本のさまざまな伝統技術を紹介している。それは、型にはまった伝統ではなく、日々新しい技術を取り入れ、自由な発想で新たなものを生み出していく職人たちの姿であり、その考え方である。

橋本は「漆や漆喰、竹や木などの見慣れた素材であっても、固定観念から離れ、視点を変えてみると、掘っても掘っても掘り切れない巨大な宝の山に見えてくる」と語り、実際、数多くのプロジェクトで職人たちと協働する。

同時に、本書には職人が語るページがあって、その率直な語り口に引き込まれる。例えば、漆の斎藤寛親
は、「突拍子もないことと言えば、橋本さんとつくった漆の風呂桶だよねえ(笑)」と言い、読み手にかつて橋本が発表した巨大な漆の風呂桶を思い起こさせる。読み進むと、斎藤自身も仏像と同じ乾漆技法を用い、かねてより風呂桶をつくってみたいと考えていたという。「べらぼうに高い(笑)」という価格を別にすれば、漆で三次元のものをつくろうと思えば乾漆技法しかなく、また実際その風呂に入ると、肌にすいつくように気持ちよく、軽くて丈夫で気候も選ばない風呂桶になるという。

こういった職人の言葉に、日ごろ知ったような気になっていた伝統技術が、新鮮なものに映り始める。本書には、新たな知見や、自由なデザイナーや職人の考え方が詰まっていて、大変興味深い。

A5判、224ページ。以下、目次
より。


1 伝統の技から生まれる「進工芸」
 漆 未知なる可能性を秘めた自然素材

 左官仕事 土と鏝から生まれる万能表現

 木工技術 ハイテクとローテクの共存

 泊 侘び寂びと華美が同居する
 和紙 空間を自在に変幻させる和紙ズム
 ファブリック 進化し続ける布

 日本伝統技術の祭典「ザ・ペニンシュラ東京」

2 職人が語る

 漆 自然がくれた宝物 斎藤寛親

 左官 伝統を守るための新たな挑戦 久住有生
 曲げわっぱ 伝承ではなく伝統であること 栗盛俊二
 西陣織 伝統と革新の京都クオリティ 斉藤上太郎

3 日本の伝統的美意識とデザイン

 間合いを楽しむ

 踊る格子
 使い回しの美学

 光を愛でる

 石の意思

 遊びから生まれる新しい日本のデザイン

4 日本のエンターテインメントを世界へ、未来へ

 対談1 伝統工芸の未来 立川裕大×橋本夕紀夫
 対談2 日本のデザイン、世界へ 渡辺真典×橋本夕紀夫