デザインアイデアを刺激する化粧フィルム――3Mダイノックフィルム

「ポスト・イット」や「スコッチ」などのブランドで知られる3M製品群を国内で展開する住友スリーエムが、建築やインテリアを中心とした内装仕上げ材の分野でも高い存在感を示している。中核となるのは、塩ビを主原料とした「3Mダイノックフィルム」だ。今春には新バリエーションを追加、3年振りにラインアップを大幅に拡充した。

ダイノックフィルムは、木目やメタリック、グラフィカルなパターンなどの柄を特殊な印刷加工技術を駆使して仕上げたフィルムシートだ。アクリル系の粘着剤で建物の壁面などに貼り、天然素材が使いにくい場所でも目的の風合いやデザインが出せることから、オフィスビルやホテル、商業施設などの空間で広く普及している。

▲天然素材の温かみから、金属の持つクールな表情まで、張り替え1つで空間のイメージを自在にコントロールできるダイノックフィルム。インテリア、エクステリアのみならず、あらゆる装飾に欠かせないマテリアルとして需要が広がっている。

例えば、東京ミッドタウンは約7万平米の壁面にダイノックフィルムを採用。天然素材のような風合いを醸す壁面や支柱も、実はこのフィルムシートの効果によるところが大きく、視覚的にも質感的に高い再現性を実現していることがわかる。

品質の高さや豊富なデザインに加え、スリ傷に強いといった耐久性、水拭きができるメンテナンス性に優れている点も評価の要因とされる。さらに三次元曲面などさまざまな下地にも対応するなど、応用力の高さにも定評がある。

インテリアデザイナーや建築家らの多様なニーズに応じるために追加された新柄には、天然素材特有の質感、メタルや箔といった風合い、デザイン性の高い複雑なパターン柄など、最新のインテリアトレンドを反映したデザインが目白押しだ。その開発にあたり設定されたのが、次の5つのコンセプトだ。

(1). ETERNAL(永遠性):永遠に続く安心感 (2). ATLAS(世界地図):ゆったりとした時間の流れや大航海時代の冒険心を盛り込んだイメージ (3). PRIMITIVE ENERGY(原始の力):原始的なエネルギーや祝祭のような雰囲気 (4). MINERAL SHEEN(鉱物の光沢):感覚に訴える、洗練された強さ (5). THEATER(劇場):オペラ劇場のような舞台づくり。

▲今回追加された新ラインナップのシート群。「 ETERNAL(永遠性)」(左上)、「ATLAS(世界地図)」(右上)、「PRIMITIVE ENERGY(原始の力)」(左下)、「MINERAL SHEEN(鉱物の光沢)」(右下)。いずれも最新のインテリアトレンドを反映し、新たに開発された。多彩な選択肢もダイノックフィルムの魅力だ。

フィルムを壁面や什器に貼るだけで、こうした多彩なシーンを手軽に演出することができる新柄の登場は、空間コーディネートのアイデアをいっそう加速させていくに違いない。さらにシングルカラーシリーズの拡充も図られ、これまで以上に柄と色の両面から豊富な選択が可能となった。その総数は757種にのぼる。

▲同じく新ラインナップより、「THEATER(劇場)」をテーマにしたシート群。

自動車部品の一部として50年前にわずか数点のラインアップからスタートしたダイノックフィルム。1980年代には米国での製造が中止となるなど、その道のりは決して平坦ではなかった。インテリア用途への転換を図ったことで今日の躍進があるわけだが、その背景には、多彩なテクノロジープラットホーム(技術基盤)の組み合わせによるシナジー効果から、ニーズを踏まえたユニークなイノベーションを常に探求し続ける開発風土がある。

3月から運行がスタートした北陸新幹線用の新型車両、E7系。「『和』の未来」をデザインコンセプトに掲げる同車両の壁の内装にもダイノックフィルムが採用された。織物調をあしらったオリジナル仕様のグレイッシュベージュ系(グリーン車)とライトベージュ系(普通車)のデザインが、ゆとりや解放感を演出した車両の空間づくりに貢献する。

▲グリーン車客室(左)および普通車客室の側面部にダイノックフィルムが採用された。

建築やインテリアを基盤としながら、トランスポーテーション分野でも展開が加速するダイノックフィルム。上質な質感と豊富なデザインバリエーションを武器に、インテリア、エクステリアを問わず、多彩なデザインを演出するマテリアルとして、さらなる活路の広がりが期待されている。

住友スリーエム株式会社 
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