商品化への道のり
「DESIGN TOKYO 編」

2013年度東京ビジネスデザインアワードでテーマ賞を受賞した新興グランド社と、津留礼子氏と津留敬文氏によるユニットMEDIUMは見本市DESIGN TOKYO(7月9日〜11日)に出展した。

新興グランド社は点字印刷を用いたルームアクセサリー用手づくりキット「Twinkle Piece」を発表。室内でじっくりと何かをつくりたくなる冬のニーズを引き出すため、第1弾はクリスマスを意識したカラースキームで「オーナメント」「リース」「モビール」「照明」の商品展開となっている。雪の結晶を思わせるパーツを青・水色・白、赤・緑・白の3色、2通りの組み合わせで揃えた。パーツの形状が複雑なため、つなぎ合わせていくにはそれなりの手先の器用さと根気が必要。そこで同じキットでも、単体でオーナメントとして飾ることを想定した6ピース入りや、クリスマスリースをつくる意気込みを持つ消費者には18ピース入りなど、ユーザーのレベルに応じて選ぶことができるように配慮した。

展示会場では、「Twinkle Piece」のパーツそのものがキラキラして女性受けすること、1枚12センチほどの大きさのパーツを折り曲げることで立体になったり、つなぎ合わせることで空間を生み出すことができるなど、見せ方を工夫したこともあって、通りすがりの来場者の多くが足を止めるブースになっていた。見本市のように無数のブースが並ぶなか、足を止めてもらうためには空間構成も重要なポイント。そして点字印刷に使われている技術からルームアクセサリーができると知ると、そのオリジナルな発想と商品としての完成度の高さ、市場性に関心を寄せる来場者が多かった。

製品そのもののデザインは早い時点で固まっていたが、「ネットショップを運営する方からは輸送のことを考えてコンパクトでかさばらないパッケージが喜ばれる一方、ミュージアムショップのように小ロットから取引を希望するバイヤーや、日本製のブランド力が高い昨今、ジャパンメイドであることを確認するバイヤーなど、展示会でさまざまな声を聞くことができました」と津留礼子氏は言う。販路に乗せていくためにこうした多様な条件や売るための仕組みを検討するのもデザイナーの役割だ。点字印刷の技術を他にも応用したいという問い合わせもあったそうで、今後、新興グランド社とMEDIUMから新たなブランドが生まれる可能性もある。「Twinkle Piece」は8月から発売。(文/長谷川香苗)


Photo by Kaori Nishida

東京ビジネスデザインアワードのホームページはこちら

前回までの記事はこちら