デザインを通してソーシャルグッドなアクションを
「バタフライスツールのメタモルフォーズ」

NPO「La Source」は、恵まれない環境に暮らす6歳から18歳の子どもや若者を対象に、創造の機会を与えるための活動を展開している。そのチャリティープロジェクトには、世界から50人のデザイナーやクリエイターが参加。今年、誕生から60年を迎えた柳 宗理のバタフライスツールへの敬意を表したオリジナルのバタフライスツールをそれぞれが制作し、「La Source」の運営をサポートするためのチャリティーオークションに出品した。

「バタフライスツールのメタモルフォーズ」というテーマに対して、オリジナルのバタフライスツールをデザインしたのはロナン&エルワン・ブルレック、マタリ・クラッセ、クラウディオ・コルッチをはじめ、シューズデザイナーのクリスチャン・ルブタン、ファッションデザイナーのジャン・シャルル・ドゥ・カステルバジャクなど、名だたるデザイナー、建築家、美術家50人。ヴィトラが提供した50のバタフライスツールをそれぞれが変身させ、「La Source」に提供。12月13日から15日までパリで展示、その後オークションが開催され、売上の全額が活動資金として寄付された。

ジャスパー・モリソンのデザインはバタフライスツールの形はそのままで、スツール全体に蝶の斑点を思わせる穴をドリルで入れたもの。

「バタフライスツールはすでに完成されたデザイン。そこに何かを加えることで、良くなるとは考えられません。僕ができることとはすでにあるバタフライスツールのデザインから引き算しつつ、バタフライスツールの形を残すことではないかと考えたんです」とモリソンは言う。

マタリ・クラッセのデザインは「Intrusion Domestique(内包的侵入)」という彫刻的なもの。

Photos by Hubert Miserey

「異質な存在を融合させてみたかった」とクラッセは言い、柳 宗理のバタフライスツールを反転し、脚の隙間に鮮やかな色のクッションを挟んだ。「自然界の硬い木材と合成繊維で柔らかなクッションという異質な素材をくっつけることで、バタフライスツールの持つタイムレスで揺るぐことのない価値を揺さぶってみたいと思ったのです」と説明している。

クラウディオ・コルッチのデザインはバタフライスツールを不織布のベールで覆ったもの。生物学的には正確な描写ではないけれどさなぎから蝶に羽化する姿のよう。

「天才的クリエイターである柳 宗理氏へのトリュビュートとして、何かが生まれる過程を表現しようと思いました。すでに存在する物を別の何かに変換することはデザイナーの特権でもあります」と作品への思いを語った。

売上金は子どもたちに自由な創造の場を与えるワークショップの運営に充てられることになっており、昨年は140人のプロの芸術家たちの指導のもと、3,150人の子どもたちがその機会を得たという。誕生から60年を経ても世界のデザイナー、美術家の創造力を刺激するバタフライスツールが、子どもたちに新たな創造の機会を与えるきっかけになることだろう。(文/長谷川香苗)

以下のサイトですべてのデザインを見ることが可能→ http://bit.ly/1wXL8Fy